「鬼滅の刃」ブームの影響で、ネットではSNSを中心にコラージュ画像(コラ)も流行している。印象的なコマに、セリフを書き換えて様々な局面に応用するものだ。作品そのもののブーム以外に、これらが流行る理由はどんなものが考えられるだろうか。
マンガ「鬼滅の刃」コラで流行っているのは、直近では鬼殺隊の隊士「柱」たちが話し合う「柱合会議(ちゅうごうかいぎ)」の場面のコラだろう。柱たちが集合し、炭治郎におすすめのマンガやゲーム、働く業界までも解説していたりする。
たとえば業界ものでは、炭治郎のセリフを「どの銀行に就職すればいいのっ...てツイートしただけなのに」と改変した上で、柱たちがメガバンク・特殊銀行・地銀...と特徴を解説していくものがツイッターで拡散された。
鬼殺隊の宿敵・鬼無辻無惨もネタにされている。配下の下弦の鬼を粛清していく様をパワハラ上司に例えたり、コミック181話での「しつこい」から始まる長セリフを改変していたりする。
こちらの無惨の「パワハラ会議」コラでは、無惨が特定のコンテンツやアーティストの熱狂的なファンとなって下弦の鬼に不満をぶちまけたり、無理難題を押し付ける改変が目立つ。
アニメ版からは24話で胡蝶しのぶが炭治郎に話しかけるカットで、しのぶに様々なセリフをつけてネタを競うことが流行った。
マンガやアニメのコマを改変して楽しむ現象は鬼滅の刃の前からあったが、短期間にこれだけパターンが生まれるのは珍しいのではないだろうか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏に聞いてみると、マンガやアニメの改変自体の歴史を踏まえつつも、鬼滅の刃自体がそれだけのビッグコンテンツになりつつあることを井上氏は示唆した。
「冗談感覚で言いたいことが言える」
「マンガやアニメでコラを作るのは2ちゃんねるがネットユーザーに親しまれていた頃からのカルチャーですが、『ドラえもん』『名探偵コナン』『北斗の拳』などのコマを使ってよくやっていました。これらの面白さは、キャラクターに自分たちが言わせたいキメのセリフを言わせられるところにあります。元がマンガやアニメなので、冗談感覚で言いたいことが言える、というのが制作者のメリットでしょうか」
確かに、これらのコラ、特に「柱合会議」コラの作者の中には、実際にその業界で働いていたり、そのジャンルに非常に精通していたりする人も珍しくない。ネタとしてのセリフの端々に、そうした人でしか言えないような解説や主張、あるいは悲哀が込められているコラも少なくない。
また、ある程度「型」が決まっているのも特徴で、このキャラクターにはこんなセリフを言わせる、という風に決まっている。「ドラえもん」なら突拍子もないことを言うのび太をドラえもんが皮肉たっぷりに揶揄する、のような筋書きだ。
鬼滅の刃でも「柱合会議」コラなら煉獄杏寿郎は自信たっぷりに王道の作品やキャラクターを推し、次の宇髄天元が元のセリフ「もう派手派手だ」に合わせてインパクトの強いモノを挙げる、という具合で類型が決まっている。鬼無辻無惨にも作中の言動から「パワハラ上司」キャラクターがネタ改変では定着している。