規格が乱立するコード(QRコード、バーコード)決済に、また新たなサービスが登場した。ANAホールディングスが2020年12月10日に始めた「ANA Pay」だ。
約3700万人の会員数を誇るマイルサービス「ANAマイレージクラブ」と連携しており、チャージや決済でマイルが貯まるのが特徴だが、利用条件を巡ってSNS上では「これでは使えない」といった声が相次いでいる。「ANA Pay」で非航空事業の充実を図りたいANAの目論見が、早くも覚束ない状態になっている。
最大還元率への「高いハードル」
「ANA Pay」を利用するには、ANAマイレージクラブの会員である必要がある。今は会員になっていなくても、このために新規登録しても構わない。スマートフォンのANAマイレージクラブアプリ内で「ANA Pay」の利用登録をすれば、クレジットカードからチャージできるようになり、加盟店でコードを示せば決済ができる。基本は200円の決済で1マイルを獲得できるが、チャージするクレジットカードの種類や決済する加盟店の組み合わせによっては、チャージと決済を合計して1000円で最大21マイルを獲得できる。
ただ、これには高いハードルがある。まず、チャージできるクレジットカードが現時点ではJCBに限られていることだ。コード決済はシステムの開発・維持や加盟店の拡張など莫大なコストと労力を必要としているが、「ANA Pay」ではこれをJCBが一手に担っている。そのため「ANA Pay」が使える加盟店は、ANA系の空港売店の他には、JCBが展開する決済スキーム「Smart Code」の加盟店に限られる。この加盟店は多くの店舗を網羅しているとは言いがたく、例えばコンビニでは大手3社のうち該当するのはローソンだけだ。
しかもチャージできるJCBのクレジットカードのうち、チャージする際にマイルを獲得できるのは「ANA JCBカード」に限られ、最も高還元の「1000円で21マイル」を獲得できるのは、年会費7万7000円(税込)の「ANA JCBカード プレミアム」だけだ。そもそもANAの航空機を頻繁に利用する人は、国際ブランドの「VISA」か「Mastercard」をANAカードで選ぶケースが多く、国内が主力のJCBは少数派。このため、SNS上では「プレミアムカードじゃないとほぼ恩恵がないなあ」「もう少し利用者のこと考えて欲しいな」といった厳しい書き込みが目立つ。