2020年12月12日に青森県で最大震度5弱を観測した地震が発生。また、17日には茨城県で最大震度4の地震が発生。さらには、18日には伊豆諸島で最大震度5弱の地震が発生するなど、ここのところ、大きな地震が多いが、これらの地震が起きた際、ツイッター上で「珍現象」が起きていたことをご存じだろうか?
試しに、12日の青森県の例を見てみよう。地震が発生した16時19分以降、ツイッター上には「地震大丈夫?」といった文言、もしくはこの文言を含んだ文章のツイートが激増。これらはいずれも強い揺れに襲われた地域を気遣うツイートだが、その中に、やや毛色が異なるものが含まれていたのだ。
花火が上がる様子を写した動画に「青森県の方、地震、大丈夫ですか!?」
あるツイッターユーザーは「みんな地震大丈夫?」という文言と共に、自らの自撮り写真を添付。また、別のユーザーは「地震大丈夫?」と心配しつつ、地震とはおよそ関係ない猫の顔を大写しにした写真を添付した上でツイートを行っているのだ。
同様の「地震とは関係ない写真」を添付したツイートは他にも出現。自らが「推す」女性アイドルの顔写真を添付しつつ被災地を案じるツイートや、自らが食べている最中の料理の写真、さらには、美しい夕日の写真など風光明媚な写真を被災地へのメッセージに添付してツイートしたり、果ては、花火が上がる様子を写した動画に「青森県の方、地震、大丈夫ですか!?、無理せず、過ごして、下さいね!!」といった文言を添付して被災地を心配する「強者」も現れたほどだ。
これら、いずれも、「地震大丈夫?」というメッセージとはかけ離れた画像や動画を添付しているツイートだが、このような「ミスマッチな」ツイートは、そのアカウントの説明文やツイート内容を見る限り、被災地以外に居住する人々であると推定されるアカウントから行われていたという状況だった。
後でも紹介するが、こうした投稿はSNSでの自撮り文化が一般化して以来たびたび発生、中には「炎上」にいたったものもあり、ネット上ではある種の「定番」になっている節もある。それにしても、一体、これらのツイートはどういう人が、どのような気持ちで行っているのだろうか。そこで、この疑問を解決すべく、J-CASTニュース編集部はITジャーナリストの井上トシユキ氏に話を聞いた。
「被災地を心配する自分は素晴らしい」「被災地を心配するあなたは素晴らしい!」
まず、井上氏はこれらのツイートを行う上での原動力は自己顕示欲や承認欲求の発露であることは疑いの余地はないとしつつ、その心理を読み解いた。
「このような人たちの心の中には、『被災地を心配する自分は素晴らしい』と見せつけたいといった自己顕示欲や、『被災地を心配するあなたは素晴らしい!』と褒められたいという承認欲求があり、その結果、『褒められるべき対象である自分の写真』つまり、自撮り写真を添付してツイートしてしまうのです」
「また、『ペットの写真』や『風光明媚な写真』といった、自撮り写真ではないものの、やはり、地震とは関係ない写真をアップしつつ被災地を心配するツイートですが、これらに関しては、もはや、かつての『2ちゃんねる』(現在の5ちゃんねる)で発生してきたような『祭り』の参加者と同類であると言えるでしょう。自撮り写真をアップする人のツイートに乗っかって楽しむのが目的なのです。こういう人が出てくると、さらに、『自撮り心配ツイート』が行われてしまい、悪循環が発生してしまうのです」
被災地を心配しつつもツッコまれてしまうツイートは、芸能人もしてしまう
もはや、被災地のことなどお構いなしのこれらの「自撮り心配ツイート」。先にも述べたようにこれらのツイートに対し、「また沸いて出てきてる」といったツッコミが入るようにはなってきてはいるものの、それでも、今回も「自撮り心配ツイート」は発生してしまったのだった。
なお、被災地を心配しつつもツッコまれてしまうツイートというものは、何も一般人に限って発生してしまうものではない。近年では2016年4月に発生した熊本地震の際に女優の藤原紀香さんがブログで発した「火の国の神様、どうかどうか もうやめてください。お願いします」という文言(現在は削除)や、2018年9月6日に北海道で震度7の地震が発生したことや、その数日前に大阪府を台風が直撃したことに対して歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんが行った「どうか地球さん落ち着いてください。お願いします」というツイートが、猛ツッコミを受けてしまったことは記憶に新しい。
「これらのツイートは、一般人による『自撮り心配ツイート』の芸能人版と言えるでしょう。これらのツイートからはどうしても、『こんなツイートを思いつく私、可愛いでしょ?』といった『ツイートした本人が自己陶酔している姿』が透けて見えてしまい、そこをツッコまれることで『祭り』に発展してしまうのです」
ただ、そのようなツイートが珍しくない中、2019年6月18日に新潟県で最大深度6強を観測した地震が起きた際に行われた女優の吉高由里子さんのツイートには、前述のものとは全く違う反応が集まった。
称賛集めた反応とは?
同日の夜には吉高さんが主演する「わたし、定時で帰ります」(TBS系)の最終回が放送されていたが、地震発生により放送は中断。1週間後に再放送されることとなったのだが、地震発生の翌日である19日に吉高さんが行った被災地を心配するツイートには絶賛が寄せられたのだった。
この時、吉高さんがツイートした文言は「娯楽は命あってのお話です 被災地の方 どうかどうか ご無事でありますように」というものだったが、この時の反応についても、井上氏に話を聞いてみた。
「吉高さんのツイートは、猛ツッコミを受けてしまった芸能人のツイートとは真逆の、ただただ被災地を思うツイートであったことが絶賛を集めた理由であることはもちろん、その出し方も素晴らしかったのです。この時、ツイッター上では『わたし、定時で帰ります』の最終回の放送が中断してしまったことに対して吉高さんを気遣う声が多数上がっていましたが、それに対する形で吉高さんが『自分のことは後回しで良い』と言わんばかりの内容をツイートしたことが絶賛された理由として大きいと思います。自ら進んで被災地を心配するツイートを行ったわけではなく、視聴者から上がった声に対して被災地を思うツイートを発したという点が、これまたツッコまれる芸能人とは真逆なのです」
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)