岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
「大統領令を!」――期限目前に祈るトランプ支持者

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12月18日までに「報告書」が提出されるのか

   ラトクリフ長官の報告書は、選挙投票日の45日後の12月18日が提出期限だ。報告書の内容が検討され、外国による選挙介入が明らかになった個人や企業に対して、大統領令に基づいて、資産が凍結される。

   しかし、「安全保障上の中国の脅威をより強調すべき」であると主張するラトクリフ長官と他の諜報関係者とで意見が割れ、期限までに提出できない可能性も一部で報道されている。

   12月14日に行われた選挙人の投票は、1月6日に上下院すべての議員の前で開票し、選挙人総数の過半数に達した者が大統領となる。通常はそれを受け入れるが、上下議員1名ずつ名乗り出れば異議申し立てができ、州の選挙人投票が無効になる可能性もある。しかし、今の時点で、モー・ブルックス下院議員(共和党、アラバマ州選出)以外に名乗り出ている議員はいない。

   今回の記事冒頭に出てくるニューヨークの抗議デモで、出会ったダニー(30代)は、トランプ支持を示す「NEW YORK FOR TRUMP」の赤い野球帽を被っていた。

   ダニーは「トランプ、勝ち目はほとんどないだろうな。でも、4年後には必ず出馬して、再選する」と言い切った。

   すると、サミーが嬉々として、携帯電話で動画を私たちに見せ始めた。12月13日に首都ワシントンで行われた「選挙不正」に抗議するトランプ支持者の大集会に、彼が参加した時のものだ。

「トランプは勝つ! こんなにたくさんの人たちが祈っているんだ。今ここで『不正』を暴き、民主主義を守らなければ、こうした選挙はこれからも続いていく」

   ダニーのように今もトランプ氏を支持し続ける人たちがいる一方で、マスメディアや民主党支持者はもちろん、共和党支持者の中にも、「国民の投票結果を受け入れようとしないトランプは、民主主義の敵だ」と非難する声は強い。

   ミネソタ州ミネアポリスに住む知人のメロディは、「証拠がないのにあらゆる手段を使っても負けを認めようとしないトランプは、最後までこの国の恥だわ」と吐き捨てるように言う。

   しかし、トランプを支持する先述のパトリックは、考えが違う。

「トランプ大統領の訴えが法廷の場でことごく却下されているのは、証拠がないからではない。保身のために、判事もトランプの味方にはなりたくないんだ」

(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

 
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