大手学習塾「臨海セミナー」、抗議の競合・ステップと「和解」 「お互い透明性のある競合関係のもとで切磋琢磨していく」

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   神奈川県内を地盤とする進学塾大手「臨海セミナー」に対し、競合19社が生徒の勧誘活動などを問題視して申入書を送付した騒動で、運営会社の臨海と、申し入れ側の幹事社である塾大手「ステップ」は2020年12月17日、「学習塾業界の健全な発展のためにお互い透明性のある競合関係のもとで切磋琢磨していくことで合意した」との共同声明を発表した。

   臨海は、申し入れ内容を踏まえて「これまでの勧誘に関して、一部行き過ぎた勧誘活動を反省し、ご迷惑をおかけした方々にお詫びするとともに、今後は結果と共にそのプロセスを大切にし、社員教育の見直しに努めます」とも誓っている。

  • 臨海本社(グーグルマップより)
    臨海本社(グーグルマップより)
  • ステップの調査資料。塾生・臨海元講師の証言などが綴られている(提供:ステップ)
    ステップの調査資料。塾生・臨海元講師の証言などが綴られている(提供:ステップ)
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  • ステップの調査資料。塾生・臨海元講師の証言などが綴られている(提供:ステップ)

申し入れのきっかけは...

   申入書は12月3日、東証1部上場のステップを幹事社とし、ISP進学研究会、岩沢学院、ウインド進学教室、英才個別学院、英和ぷれぱある、岡本塾、啓悠舎、黄学館、秀英予備校、学習塾伸学舎、中萬学院、TOPIA、中村学院、日能進学教室海老名校、ひのき進学教室、フジキン学院、緑進学院、早稲田アカデミーの19社が連名で送付した。

   申し入れのきっかけは、臨海セミナーの現役社員が11月下旬、受験情報サイト「カナガク」で「当社が行っている強引な生徒勧誘や合格者作りの手法には社会的に容認できないものがある」などとして、内部の実態を告発したためだ。

   ステップは告発を受け、自塾の生徒からの相談内容や臨海から転職してきた社員へのヒアリング結果も踏まえて19社と抗議を決めた。

   申入書では、臨海セミナーが塾生から「『学校の友人の中での成績優秀者』の名前・塾名・志望校など」の個人情報を聞き出し、それをリスト化、掲載された成績優秀者には、塾生を通じて模試やアンケートを渡し、模試や講習などの申し込みにつながれば、塾生に金券類を提供していると非難していた(J-CASTニュース既報)。

   一方、臨海は10日、公式サイト上で

「このリストに関しては念のため複数の弁護士にも確認し、違法性は見当たらない、というご判断もいただいております。模擬テスト実施後の勧誘にあたっては、行き過ぎはあってはならないと考えます。今回もし行き過ぎた行動や営業があったとしたら、その点は当然ですが今後是正していくべきものと考えております」

などと弁明した。

合格実績のカウント方法も焦点に

   申入書では、入試直前に他塾に通う生徒を籍はそのままで「特待生」(難関校の受験、結果の報告、広告掲載などを条件に、授業料が一定額免除される制度)として勧誘しているとも指摘した。

   もしこの生徒を合格実績としてカウントしている場合、「自塾の合格実績だけを増やそうという意志を強くもった組織的な行為と考えられ、モラルに欠ける行為と言わざるを得ません」と忠告していた。

   内部告発者などからも同様の証言が上がったが、臨海は10日、

「合格実績に関しては、弊社自主基準に沿って管理を行っておりますが、当然のことながら一定の基準をクリアした指導を行った生徒のみ合格実績としてカウントしており、指導時間や日数が不十分な生徒、模試のみ・講習のみの生徒、指導を受けていない生徒を実績にカウントすることなどはありえません」
「弊社の合格実績に関しては、全て通塾生名簿と完全なる照合を行い掲出しているものであり、疑いをもたれる余地は全くございません」

と公式サイト上で否定した。

10日に公式サイトで公表された合格実績の自主基準
10日に公式サイトで公表された合格実績の自主基準
10日に公式サイトで公表された合格実績の自主基準
10日に公式サイトで公表された合格実績の自主基準

「学習塾業界の健全な発展」に向けて和解

   その後も、臨海側がウェブサイト上で相次いで声明を掲載し、ステップも見解を出すなど騒動が続いた。しかし、臨海、ステップ双方は17日、公式サイトで「両社は今後、生徒の学力の充実を通した社会への貢献、そして学習塾業界の健全な発展のためにお互い透明性のある競合関係のもとで切磋琢磨していくことで合意したことをご報告いたします」と共同声明を掲載した。事実上の和解とみられる。

   臨海は「営業運営方針」も掲載し、「全職員で共有し徹底し運営していくことを宣言します」として次の4点を示した。

「一、過去の合格実績について、これまで「自主基準」を公表してこなかったことで、一部誤解や疑問を招いたため、今後は透明性の確保に取り組みます。『授業力・面倒見・モーレツな学力アップ』。学習指導と営業行動を両立し、信頼向上・在籍増に結びつく合格実績の輩出を目指します」
「二、『営業の基本はリスト管理』 プライバシーマーク、JAPHICマークの内容に則り、個人情報の収集、蓄積については、個人情報保護法の精神を尊重し、特に未成年の生徒に依頼する情報収集については、その方法に十分留意します」
「三、これまでの勧誘に関して、一部行き過ぎた勧誘活動を反省し、ご迷惑をおかけした方々にお詫びするとともに、今後は結果と共にそのプロセスを大切にし、社員教育の見直しに努めます」
「四、教育に携わるものとしての自覚とプライドを持つ社員による組織体制、営業体制を目指します。そのための人材育成には最大限の投資をしていくとともに、モラル・マナー・社会性のある会社組織を目指します」

(J-CASTニュース編集部 谷本陵)

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