問い合わせ「できれば控えてほしい」
自分の旅行が対象外になるかどうかなど、問い合わせが各社で相次いでいる。Aさんは現時点での旅行会社への問い合わせについて、複雑な胸中をのぞかせる。
「できれば控えてほしいです。なぜなら問い合わせを受けるセンターまでまだ何も情報が入っていないので、社内の者も不明点だらけだからです。しかし、これも私がお客様なら問い合わせしたい気持ちはあるので致し方ないと思います」
「1つお願いがあります」。Aさんは取材の最後、そう言って旅行業界の構造、現状、世間からの風当たりに、率直な心境を明かした。
「私のいる団体旅行で申しますと、年始にお1人100万円ほどの旅行催行があります。この旅行を催行するために1年ほど前から、つまりコロナが始まる前から、貸切列車の手配、豪華なバスの手配、高級宿や食事会場の手配を行っています。そして、すでにそれに対する費用もかかります。
しかし、実際にはキャンセルが相次いでいます。キャンセルが相次いでも催行すると、1人当たりの売り上げが減ってしまいます。旅行は1件あたり10%程度利益があれば良いと言われています。逆にいうと90%が各関係箇所に支払うのです。
つまり50%という大きな補填があっても、40%は赤字なのです。それが何件も何件もあるから、もう出ていくお金しかないですよね。そういう状況なんです。それをもう少し皆さんにも知ってもらいたいと思います。
飲食業や製造業はどちらかというと現在から未来のためにやっていますが、旅行業は旅行を楽しむために過去から現在に進んでいます。なので、『旅行業ばかり...』と言われても、もう1年も前から支払っている料金などもあるわけです」