政府の観光支援事業「GoToトラベル」に対する批判が強まる中、菅義偉首相は2020年12月14日になって、事業の一時停止を打ち出した。全国で事業を停止する期間は、2週間後の12月28日から1月11日までだ。
感染が拡大する中、世論調査では年末年始の旅行は見合わせるとの声が大半を占める。そのため、今回の政府の判断による感染抑制の効果は限定的だとみられる。菅氏は緊急事態宣言の再発令を検討しているかについて記者団から問われ、「してません」と回答。ただ、世論調査では再発令すべきだとの声が過半数で、一部野党からも再発令を求める声があがる。
世論調査では年末年始の帰省・旅行「しない」81%
NHKが12月11~13日にかけて行った世論調査では、「年末年始に帰省や旅行をするか」という問いに対して、「しない」という回答が81%を占め、「する」は、わずか5%。「まだ決めていない」は11%だった。GoToの事業停止が念頭に置いているのは、年末年始の休暇と年明け1月9~11日の3連休だとみられるが、この調査結果を踏まえると、年末年始のGoTo停止で影響を受ける可能性があるのは「する」「まだ決めていない」の16%に過ぎない。
菅氏が緊急事態宣言の検討を否定したのに続いて、翌12月15日の加藤勝信官房長官の会見では、外出自粛を求めるなどのさらに踏み込んだ対応の可能性について質問が出た。加藤氏は
「地域の感染状況などを踏まえた対応を求める(有識者による)分科会の対応を踏まえて、病床の確保状況や地域の感染状況を最も把握している自治体において、すでに具体的な呼びかけがなされており、現時点においては13の都道府県において、不要不急の外出を極力控えるとの要請がなされていると承知している。国民の皆様には、こうした呼びかけ等に対するご協力を是非お願いしたい」
などと応じ、政府としての対応については言及しなかった。
「GoToを止めればなんとかなるレベルを超えています」
ただ、世論調査では、緊急事態宣言を発令すべきだとの声が過半数だ。前出のNHKの世論調査では、「出すべきだ」が57%、「出す必要はない」が30%。毎日新聞と社会調査研究センターが12月12日に行った世論調査でも、政府が緊急事態宣言を再び発令すべきだと思うかとの問いに、「発令すべきだ」が57%で「発令する必要はない」が28%だった。
野党からも再発令を求める声は出ている。国民民主党の玉木雄一郎代表は、
「27日までに動いた人の発症は年末年始にくるので年末年始の医療提供体制を逼迫させる可能性があります。止め方が中途半端だと言わざるを得ません。GoToを止めればなんとかなるレベルを超えています。入国規制の強化を含めた戦略的な移動・接触制限に取り組む必要があり、緊急事態宣言を検討すべきです」
などとツイートした。
緊急事態宣言は新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて出され、都道府県知事の権限で「多数の者が利用する施設」について使用制限や停止を「要請」できるようになるほか、大規模イベントについては、知事が開催中止を「要請」し、応じない場合は「指示」できるようになる。ただ、休業補償や、要請や指示に従わなかった際の罰則が定められていないため、実効性を疑問視する声も根強い。
実効性を持たせようという動きもある。立憲、共産、国民、社民の野党4党は12月2日、緊急事態宣言に関連する知事の権限を強め、休業要請した際の給付金を政府が全額負担することを柱とする特措法の改正案を提出。これとは別に国民は、施設の使用停止を知事が命令することができ、従わない場合は罰則を科すことができる改正案を独自に提出している。ただ、臨時国会は12月5日に閉会。議論が本格化するのは、通常国会が召集される21年1月上旬以降になりそうだ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)