井上尚弥「打倒」狙うフィリピン勢 躍進の秘密、専門家に聞く

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   ボクシングのバンタム級戦線が動き出そうとしている。世界のバンタム級はWBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋)を中心に動いており、井上への「挑戦権」をかけ世界のトップがしのぎを削る。なかでもフィリピン出身ボクサーの勢いが増し、井上の王座を虎視眈々と狙っている。

   ドネア、カシメロ、ダスマリナス、ガバリョ...。フィリピン勢の実力、そして強さの要因とは...。J-CASTニュース編集部は、協栄ジムの金平桂一郎会長(55)に分析してもらった。

  • 井上尚弥
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「キャリアからいえばドネアがトップ」

   バンタム級戦線のトップに名を連ねるフィリピン勢のなかで、金平会長が最も高く評価するのが世界5階級制覇のノニト・ドネア(フィリピン)だ。2019年11月に行われたワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級決勝戦で井上と死闘を演じ、改めて健在ぶりをアピールした。金平会長は「全盛期に比べやや落ちているとはいえ、キャリアからいえばドネアがトップでしょう」と話す。

   そのドネアは12月19日にエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)とWBC世界バンタム級王座決定戦を行う予定だったが、新型コロナウイルスの陽性反応を示したとして出場を辞退した。フィリピンメディアによると、ドネア本人は「偽陽性」の可能性に言及しており、19日の王座決定戦出場に意欲を見せているという。

   金平会長がドネアに次いで2番手とするのがWBO王者ジョンリル・カシメロ(フィリピン)だ。カシメロはビッグマネーを求めて井上との対戦を望むものの、実現する気配がなく、海外メディアでは、来春にWBAレギュラー王者ギレルモ・リゴンドー(キューバ)と対戦する可能性が報じられている。リゴンドーとの対戦が実現すれば、井上への「挑戦権」をかけたサバイバルマッチとなる。

「パッキャオの成功に触発されたと...」

   金平会長は「カシメロは今勢いがあります。ただ、ボクシングの技術的には穴が多く、ボクシング自体が粗い。井上選手と対戦した場合、技術的な欠点を突かれてしまうでしょう」と指摘した。

   フィリピン勢のなかで、井上との対戦の可能性が高いとされるのがIBFバンタム級1位マイケル・ダスマリナス(フィリピン)だ。指名挑戦者の権利を有し1年以上待ちの状態が続いているが、来年にもビッグチャンスが巡ってきそうだ。また、WBAバンタム級1位レイマート・ガバリョ(フィリピン)はドネアの代役として19日にロドリゲスと対戦する予定となっており、同カードはWBC世界バンタム級暫定王座決定戦となる見通しだ。

   金平会長は「ダスマリナス、ガバリョともに実力のあるボクサーだと思いますが、井上選手と比べると力は劣るでしょう」と前置きした上で、フィリピン出身ボクサーの強さの要因について次のように指摘した。

「フィリピン選手の活躍の大きな要因としてパッキャオの存在があるでしょう。やはりパッキャオがアメリカで成功したのが大きい。フィリピンの多くのボクサーがパッキャオの成功に触発されたと思います。アメリカで成功すれば大金を手にすることが出来る。これをパッキャオが証明したわけですからボクサーを志す若い人も増えたでしょうし、レベルの底上げにもなったと思います」(金平会長)

フィリピン選手が持つ米国での強みとは...

   フィリピン選手は積極的に海外のリングに上がり、ドネアやカシメロも海外でタイトル戦を行ってきた。金平会長はフィリピン選手が海外で活躍出来る要因を次のように分析した。

「フィリピンのボクシングの歴史は長く、かつてはハワイやロサンゼルスなどで活躍した選手も多くいます。海外に出向くことをいとわず、そこでメンタルが鍛えられる。アメリカでの成功例をみてみると、アメリカの西海岸にはフィリピンのコミュニティが存在し、アメリカ在住のフィリピン人が試合のたびに会場にかけつけ選手を後押しする。チケットやペイ・パー・ビューの売り上げが上がればプロモーターはフィリピン選手の試合を組みやすくなる。これも強みだと思います」(金平氏)

   また、金平会長はフィリピン選手が肉体的にボクシングに適していると指摘する。

「フィリピンの選手は体が柔らかく、バネのある選手が多い。ボクシングと親和性があると思います。体の柔らかさは、ボクシングにおいて利点のひとつで、ドネア選手のようにものすごいバネを持った選手もいます。これも強い選手が生まれるひとつの要因だと思います」(金平氏)
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