東京・東池袋の路上で乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と莉子ちゃん(同3)親子を死亡させるなどした事故で、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の第3回公判が2020年12月14日、東京地方裁判所で開かれた。公判後、被害者参加制度で裁判に参加している真菜さんの夫・松永拓也さん(34)らが会見し、「加害者を見ていると『他人の裁判』のような印象を受ける」と振り返った。
いつも公の場では冷静に振る舞っているように見える松永さんだが、この日の会見では言葉を詰まらせ、涙ぐむ発言があった。「真菜さんの友達」について言及した時だった。
「私は『勘違い』から始まっているとしか思えません」
無罪を主張している飯塚被告の弁護側はこの日の公判で、「ブレーキペダルを踏んだが減速しなかった」などとし、アクセルペダルの踏み間違えではないことを主張している。
松永さんは公判後の会見で「今回初めて相手方から具体的な主張がされましたが、意見書の中身を聞いて、いま検察の方が集めてくださっている証拠ですべて反論できるなと私も思いました」とし、警察、検察、自身を支える人々に感謝した。被告側の具体的な主張について次のように述べている。
「『運転中にパニックになった』とはっきり述べられていました。その中で加害者は、『アクセルが戻らなくなったことをはっきり目視した』と述べました。目視するには右足をあげただけでは見えず、左にずらさないと見えないことは実況見分で分かっています。果たして事故のたった2~3秒でそんな余裕があるのか。『目視をしたからもう一度足を戻したときに同じ間違いをするとは考えづらい』と仰っていましたが、『目視をした』というのは信ぴょう性があるのか、非常に疑問を感じました。
健康について、弁護側が『特に健康に問題はなかった』と主張していました。ただ一般的に見て、逆に皆様に問いたい。あの状態で運転することは、皆様から見てどう思いますか。一般的な健康と運転するうえでの健康は違うと思います。もちろん法律的には問題ないのでしょう。都内に住んでいて、非常に便利なところだと思う。何か他の(移動)手段はあったのではないかと私は今でも思います。
次に『10年以内に事故はない』と何度か述べていましたが、最初の公判で平成13年(2001年)に人身事故を起こしていることは事実として挙がっています。その段階で家族と話し合わなかったのか。今後裁判が進む中でそうしたことも聞いていきたいです。
最後に、ブレーキやアクセルについて踏んだ踏まないと反論していましたが、そもそも証拠を見る限り、私は『勘違い』から始まっているとしか思えません。今後、鑑定人の方が2名ほど証人として出てくださるという話です。私自身も裁判に参加して注視したい」