静岡県警は新東名高速道路の御殿場ジャンクション(JCT)―浜松いなさJCT(約145キロ)間で、2020年12月22日14時から制限速度を時速120キロに引き上げると発表した。
高速道路の制限速度をめぐっては、警察庁が2020年7月、新東名、東北道、常磐道、東関東道の4路線5区間で時速120キロを導入する方針を決めていた。
日本で最長区間での導入
新東名では新静岡インターチェンジ(IC)~森掛川IC(約50キロ)間で2019年3月~20年2月、制限速度を従来の100キロから120キロに引き上げる試みが行われたが、死亡事故はゼロだったという。
新東名では今回、御殿場~浜松間で6車線(片側3車線)とする工事が完了するの に伴い、静岡県警は制限速度の引き上げを決めた。
高速道路の制限速度を時速120キロとする運用は、岩手県の東北自動車道の盛岡南IC~花巻南IC(約27キロ)間でも試行期間を経て9月16日から始まっている。
これに続く新東名の運用区間は約145キロと長く、日本で最長となる。
今回の新東名の本格運用に合わせ、静岡県県は「最高速度は120キロになりますが、120キロで走行する必要はありません」と異例のコメントを発表した。
さらに静岡県警は「十分な車間距離を保ち、進路変更する際は安全確認を確実に行っていただくとともに、交通状況に応じた安全な速度で走行してください」と呼び掛けている。
日本の高速道路は1963年に日本初の高速道路として名神高速が開通して以来、制限速度は時速100キロと定められてきた。
道幅や路肩の広い高速道路、自動車の性能向上
しかし、新東名のように旧来の高速道路に比べて道幅や路肩が広く、カーブが少ないなど、時速120キロで安全に走行できる高速道路が各地に誕生した。
さらに国内を走る自動車の動力性能と安全性能が格段に上がったことから、多くの高速道路で実勢速度が時速100キロを超え、新東名(新静岡IC~森掛川IC間)では122キロとなっていた。このため警察庁は実態を踏まえ、2013年から、制限速度の見直しを進めてきた。
海外の高速道路では、原則として制限速度のないドイツのアウトバーンが有名だが、一部区間に規制があるほか、時速130キロを推奨速度としている。
フランス、イタリアはともに制限速度が時速130キロ、英国は70マイル(112キロ)。米国は州によって異なり、ニューヨーク州は65マイル(104キロ)となっている。
このほか欧州では、デンマークが2004年に時速110キロから130キロ、スウェーデンが2008年に110キロから120キロに引き上げるなど、120~130キロが主流となっている。
世界一の自動車生産国となった中国も、高速道路の制限速度は時速120キロ。自動車先進国の日本は制限速度の緩和では海外に遅れをとってきたが、ようやく欧米諸国や中国と並ぶ120キロが実現することになった。