「総選挙」にらむと読む新聞各紙
これについて大手紙は、発表前から「量ありき、効果に懸念」(日経4日朝刊5面)などと指摘。発表を受けた9日朝刊も「総選挙にらみ規模感優先」(朝日3面)、「規模ありき 歳出圧力」(毎日2面)など、こぞって批判的に報じた。あるエコノミストは、「そもそも対策で実際に大半が支出される2021年度以降に、需給ギャップがどの程度になっているかは見通せないし、仮に対策によってギャップが埋まったとしても、それで失業が解消され、あるいは事業が回復し、国民生活が安定を取り戻すというものでもない」と指摘する。
中身も問題がある。菅首相が「雇用を維持し、事業を継続し、経済を回復させ、新たな成長の突破口を切り開く」(8日の政府・与党政策懇談会)と強調するように、コロナ対策と経済成長の「二兎を追う」のが政権の狙いで、(1)新型コロナ感染拡大防止策、(2)ポストコロナに向けた経済構造の転換、(3)国土強靱化――を3本柱に掲げる。ただ、このうち、国土強靱化は自民党の二階俊博幹事長の肝煎り施策で、対策全体の規模を大きくするための「膨らし粉」になった形。5年で15兆円とするうち、今回の対策分は5兆円以上とされる。
菅首相肝いりの「看板政策」に関わる基金も懸念はある。脱炭素化に向けた2兆円規模の基金のほか、世界レベルの研究基盤を構築するため10兆円規模の「大学ファンド」も新設する。複数年にわたって使われる基金事業は、対策の規模を大きく見せるために使われる常套手段だが、支出のチェックが甘くなり、無駄遣いの温床になった例も過去にあり、批判が根強い。
2020、21年度の各5兆円ずつとされた予備費も、不測の事態に即応するためとの大義名分で、使途はコロナ対応に限定されるとはいえ、国会の議決なしで政府の判断で使えるだけに、第2次補正での5兆円にも、あまりに多額だと、野党が猛反発した経緯がある。コロナ前は年間5000億円程度が相場だったことを考えると、支出へのチェック機能が弱まる恐れがある。
大手紙は一斉に社説(産経は「主張」)で9、10日に論じたが、日ごろの政権へのスタンスの違いを越えて、総じて辛口だ。