「特殊会社」NTTの位置づけ
国がNTTを特殊会社と位置付けているのは、国民生活に不可欠な電話を日本全国で利用できるようにするためであり、外国人の株式取得に制限を設けていることで分かるように有事の際の通信手段を国として確保するためでもあった。しかし今回は、携帯電話料金を下げて政治的な実績を上げたい菅氏と、ドコモの完全子会社化を機にNTTグループの再結集を図りたい澤田氏の利害が一致したとも考えられる。
ドコモの思い切った値下げに、競合するKDDI(au)やソフトバンクは衝撃を受けている。両社は菅政権の値下げ圧力に対してサブブランドのUQモバイルやワイモバイルの値下げで応じ、メインブランドの料金体系を守ろうとしたが、メインブランドの値下げも表明したドコモに対抗せざるを得なくなった。
官房長官時代の菅氏が携帯電話料金について「4割程度下げる余地がある」と発言した2018年8月以降、政府は端末代金と通信料の分離を義務付けるなど大手携帯電話会社に料金値下げを促してきたが、大手3社は事実上の横並びでメインブランドの大幅な値下げには至っていなかった。ドコモが均衡を壊したことで、各社は利益度外視の消耗戦に突入していくことになりそうだ。