新人はドラフトを経て各球団に入団する。1位指名の選手が注目され、チャンスの数も多いが、活躍できる選手は多くない。
2010年ドラフト1位でソフトバンクに入団した山下斐紹は「将来の正捕手候補」と期待されながら伸び悩み、17年オフにトレードで楽天へ。20年は8試合の出場にとどまり、戦力外通告を受けた。一方、同年のドラフトで育成選手として入団した千賀滉大、甲斐拓也は無名の存在だったが、球界を代表する選手に飛躍。対照的な結果になっている。
「1年目から2ケタ勝てる」→プロ4年で0勝
「大学No.1右腕」の呼び声高く、16年ドラフトの目玉として注目されたソフトバンク・田中正義も苦しんでいる。156キロの直球とスライダー、フォークを武器に、創価大の3年時はユニバーシアード代表としてNPB選抜と対戦した際は7打者連続三振の快投。バックネット裏のスカウトたちは「モノが違う」、「1年目から2ケタ勝てる」と絶賛していた。
5球団が競合の末、希望球団のソフトバンクに入団したが、右肩痛、右肘痛と度重なる故障に見舞われる。今年は1軍登板なしに終わり、プロ4年目を終えた時点で通算11試合登板0勝1敗、防御率8.16。先発の柱として期待されたが、未勝利で背水の陣を迎えている。
10年ドラフトで田中、柳裕也と共に「大学ビッグ3」と高い評価を受けたのがロッテ・佐々木千隼だった。150キロを超える直球とスライダー、シンカーなど多彩な変化球を武器に、アマチュア球界屈指の好投手として評価が高かった。桜美林大の4年時には東海大の菅野智之(現巨人)に並ぶリーグ最多記録の年間7度の完封勝利をマーク。ドラフトで「外れ1位」でNPB史上最多の5球団が競合した。
即戦力と期待されたが、佐々木も田中と同様に万全のコンディションでなかなか投げられない。右肘痛、右肩痛に悩まされて今季は5試合登板のみ。新人の17年で4勝を挙げたのが自己最多は寂しい数字だ。
同期の村上に差をつけられた清宮
球界を代表する強打者としての将来を期待された、清宮幸太郎も伸び悩んでいる。早実で1年から主軸を担い、甲子園に2度出場して史上最多の高校野球通算111本塁打を樹立。17年ドラフトでは高校生最多タイの7球団が競合して日本ハムに入団した。
新人1年目は王貞治氏(現ソフトバンク球団会長)に並ぶ歴代9位の7本塁打をマークしたが、翌18年は右有鉤骨骨折で戦線離脱し、81試合出場で打率.204、7本塁打。今季は自己最多の96試合に出場したが、打率.190、7本塁打と不本意な成績に終わった。チャンスを与えられているが、確実性が低くプロの球に対応できているとは言い難い。
同期入団のヤクルト・村上宗隆は昨季全試合出場で36本塁打をマークし、今季も打率.307、28本塁打の好成績で不動の4番の信頼を勝ち取っている。完全に水をあけられた格好となった。
ドラフト1位で指名されただけに、その潜在能力はプロの中でもトップレベルだろう。ただ、結果を残さなければプロの厳しい世界から淘汰されていく。田中、佐々木、清宮...アマチュア時代のような輝きを放つことをファンは信じている。