コミュニケーション不足が「育児の孤立化」に拍車
(3)保護者との連携
新型コロナウイルスの影響は保育施設の職員や子どもだけに留まらない。感染対策の中で生じてくるのが「保護者とのコミュニケーション不足」という課題だ。
明日香が全国の保育園・幼稚園に通う子どもを持つ会社勤めの保護者に対して行ったインターネット調査(有効回答101人、集計期間:2020年9月8日~10日)では、「他の感染症も増えてくる本格的な秋・冬に向け、育児に関する悩みはありますか?」という問いに対し76.2%が「ある」と回答。その中で出た悩みの中には、
「冬に向けて、今以上に何をしたらいいのか分からない」
「コロナ渦の中どこで遊べばいいか」
「保育園の行事がなくなったり、縮小したりする中でなかなか先生やお母さん方と何気ないお話ができないのが、ストレスがたまる」
といった声が見られる。
「保護者にとっては園にきて何気ない会話を先生たち、保護者としたりして子育てに関する情報を仕入れたりします。インターネットリサーチで回答は出ていますが、そういったコミュニケーションはかなり不足している。ただでさえ子育ての孤立化が進んでいるので、そういた意味では国を挙げて今課題に挙げている『少子化対策』にも大きな影響を与えていると思います」(末廣さん)
施設によってはオンライン保護者会の実施や、手紙のやり取りを通じて保護者とのコミュニケーションを図っている。末廣さんは複数の保育施設が休園していた緊急事態宣言時に「預け先の重要さが明るみになった」と話す。
「子育ての悩みがあっても、なかなか他の人には聞けないことがあります。その理由の一つが、聞くことへの『罪悪感』です。『みんな普通にやっているのに、私は聞いていいのかしら』『こういうの聞くのは普通ダメなんだよね』といった先入観がある方もいます。そういったことを聞いてもいいんだよ、と周りから伝えていくことが必要なので、ベビーシッター(明日香の事業の一つ)として対応している時はお話しています。
普段会っている先生と会わなくなってしまうと、子育てに対する不安はより強くなってきます。その中で『いつでも聞ける』という環境を築くのはすごく大事なことだと思います」(末廣さん)
新型コロナウイルスが拡大する以前から、社会問題の一つに挙がっている「育児の孤立化」。末廣さんはこの問題がコロナ禍でより深刻化しているとし、今後は保護者とのコミュニケーションにおいて、「オンライン・オフラインの両立」が重要になってくると話す。
「内閣府が発行する『少子化社会対策大綱』の中でもICT化が謳われており、数年前から保育業界では導入がどんどん進んでいます。例えば施設側としては、保護者とコミュニケーションをとるツール(連絡帳など)を電子化することで、コミュニケーションの隔たりをなくしていこうという取り組みです。
ただ、保育業界全体としては昔からITリテラシーの低さが課題にあり、これをクリアするのは結構ハードルが高いです。行政主導のもと、もう少し普及させていけたらと思います」(末廣さん)