新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、「1人用の食」が広がっている。感染予防のため、同じ皿の料理を大勢の箸でつつきたくない、という傾向が強まっているためだ。いつもの冬なら家族や仲間たちと囲む鍋も1人用に変わりつつあり、個包装の「鍋つゆ」や1人鍋専門店などが人気を集めている。
その年に流行しそうな鍋を予想している飲食店情報検索サイト「ぐるなび」は、この冬のトレンド鍋を「みんなでこなべ」だと発表した。一人一人が個々に食べる「こなべ」が「コロナ禍の新しい生活様式に沿った安心・安全な鍋スタイルといえる」と説明している。
レシピ本も出版ブーム
味の素やミツカンなどの食品メーカーでは数年前から、個包装の「鍋の素」や「鍋つゆ」などを売り出しており、種類も増えているが、「今年は特に注目度が高い」と食品業界関係者は話す。個包装の商品は元々、家族の人数が減る中、少人数でも鍋を楽しめるように、と開発されたものだが、この冬は感染対策としても関心が高い。「各地のスーパーなどで売り上げは着実に伸びている」(業界関係者)という状況だ。
こうした動きに合わせるように、ホームセンターや雑貨店では商品棚に「1人用の鍋」をそろえる動きも広がっている。100円ショップではレンジでインスタントラーメンを簡単に作れる「レンジでラーメン」といった製品が人気を集め、「1人鍋」での活用がテレビで話題になっている。「小鍋」用のレシピ本も「出版ブーム」(ぐるなび)になっているという。
また、外食業界ではここ数年、「おひとり様」専用の業態が増えているが、コロナ禍で強みを発揮している。専用業態で提供しているのは、かつては1人で楽しむのが難しかった「しゃぶしゃぶ」や「すき焼き」から「焼き肉」まで多様だ。