コンテンツ有料配信サイト「cakes(ケイクス)」への連載を中止した対応について、声優が姉妹サービス「note」への投稿で不満を訴えている。
連載は、自殺した友人についてのものだったという。サイトを運営するnote社の広報担当者に話を聞いた。
遺族から協力を得て、自殺した友人について12回分書く
この声優は2020年6月、友人について書いたnote への投稿が「cakesクリエイターコンテスト」で受賞し、cakesに連載することも可能になった。
声優が今回のことでnoteに書いた12月9日の投稿によると、遺族から遺書提供などの協力を得て、友人のことについて連載することになり、編集者のアドバイスを受けながら、11月上旬からの予定で12回分を書いた。
ところが、10月に入って、写真家がcakes でのコラムでDV被害の相談者をウソつきだとしてネット炎上し、note側がcakesサイトで謝罪する騒ぎが起きた。すると、数日経ってから、自殺というセンシティブな内容のため、編集者から書き直すよう言われ、さらにフィクションの形を打診されたという。声優が難色を示すと、編集長からは、内容に問題があるとして、掲載できないとメールが来た。
cakesを巡っては、11月にも炎上騒ぎがあり、同月末に編集長が交代した。その後、執行役員からは、声優に非はなく、炎上騒ぎのためだと説明を受け、1回7000円の原稿料を支払うと言われたという。
これに対し、声優は、協力を受けた遺族には何と説明していいのかと投稿で悩みを打ち明けている。
このnote投稿は、ネット上で、大きな反響を呼び、様々な意見が寄せられている。
「自殺者の心情をリアルに書いており、このままでは連載ができない」
センシティブな内容だとするnote側の説明に同意する声も出る一方、声優が力作連載を世に問えないことに同情する向きも多い。別の媒体などで連載すればよいとの指摘も出て、出版関係者からはオファーまで来ていた。
この騒ぎを受け、cakesの公式ツイッターは12月10日、多数の批判が届いているとして、「ひとえに、編集部からのコミュニケーションに未熟な点があったことに起因しています」として謝罪した。編集長を交代して体制刷新を進めているとして、「著者と真摯に対話してまいります」と説明した。
noteの加藤貞顕社長も同日、cakesについて、「多様性を重視しつつ、それが大勢のひとに伝わる、編集力を生かしたメディアをつくれたらなと思って始めています。残念ながら、現在の状況はそれができているとはいえません」と認め、声優には大変申し訳なく思っていると明かした。
同社の広報担当者は、J-CASTニュースの取材に対し、声優が準備した連載の中止を打診したのは事実だと認めたうえで、次のように説明した。
「細かなやり取りなどの詳細についてはコメントを控えますが、連載では、自殺当事者の方の心情をリアルに書いておられました。自殺者のご家族や悩みを抱えている方々への影響がありうるとして、10月に、このままでは連載ができないことをお伝えしました。表現を修正することなどを提案しましたが、ご本人が納得できるやり取りができなかったようで、大変申し訳のないことしたと思っています」
現段階でも、cakesでの連載は難しいとしており、今回のことを受けて声優に謝罪し、納得してもらえるよう話し合っているとした。
連載については、あくまでも希望があれば可能なもので、契約で確定したわけではないという。連載が確定したものではない限り、契約上の制限はなく、他の媒体などに載せることには支障はないとしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)