「適切に塾選びをする権利を奪うことにつながります」
合格者の"水増し"については、「リストに載った他塾の優秀生に模試を渡し、結果を知らせるとの口実で来校してもらいます。そこで授業料免除の特待生に認定し、その後、簡単な個別指導や質問対応をすればカウント対象となります。ほかにも、短期間の特別講座を受講した生徒も含みます」と手口を明かす。
「ちょっと通わせてカウントするというのは、『うちではトップ校と呼ばれる学校に合格させられないから他から集めてます』と言っているようなものではないでしょうか」
「うちで出した合格者数と他の塾で出した合格者数を足し算すると、入学した子よりもはるかに多くなりかねない。そうなると塾業界の信頼にかかわります。合格実績で比較できなくなるからです。消費者が適切に塾選びをする権利を奪うことにつながります」
東原さんの問題意識は、ステップが複数の元臨海社員に実施したヒアリングでも異口同音に語られた。
ある元社員は、
「こうした環境にいると自然とそれが自分の中に染み込み、世間一般の良識や常識を塗り替えていってしまい、数字を出せばほめられて、それだけが正義になります。素直で真面目な若手は染まるのも早く、壊れて退職していく流れになります。基本的にブロック長以上の人間は対話でマウントを取るタイプの人間がほとんどで、人の話をまったく聞きません。それこそ上司が言えばカラスも白くなります。
そんな中で追い詰められた日々を送っていくと、立場に比例して自分の人間力・実力が高まったと勘違いする人間も少なくありませんでした」
と証言し、別の元社員は「自分がやってしまった行為は社会的に恥ずべき行為であり、塾講師としてのモラルに欠けるものだと思います」と後悔を口にする。
臨海側の受け止めはどうか。同社に、告発文の内容などについて取材を申し込むも、「内容を確認させて頂いた上、弊社内で検討させて頂きましたが、今回の取材をお受けする事につきまして、見送らせて頂く事となりました」と回答。理由については「冬期講習直前での繁忙期のため時間をとることができない」とした。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)
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(17日16時追記)臨海、ステップは17日、「両社は今後、生徒の学力の充実を通した社会への貢献、そして学習塾業界の健全な発展のためにお互い透明性のある競合関係のもとで切磋琢磨していくことで合意したことをご報告いたします」と共同声明を発表した。
臨海は「営業運営方針」も掲載し、「全職員で共有し徹底し運営していくことを宣言します」として次の4点を示した。
「一、過去の合格実績について、これまで「自主基準」を公表してこなかったことで、一部誤解や疑問を招いたため、今後は透明性の確保に取り組みます。『授業力・面倒見・モーレツな学力アップ』。学習指導と営業行動を両立し、信頼向上・在籍増に結びつく合格実績の輩出を目指します」
「二、『営業の基本はリスト管理』 プライバシーマーク、JAPHICマークの内容に則り、個人情報の収集、蓄積については、個人情報保護法の精神を尊重し、特に未成年の生徒に依頼する情報収集については、その方法に十分留意します」
「三、これまでの勧誘に関して、一部行き過ぎた勧誘活動を反省し、ご迷惑をおかけした方々にお詫びするとともに、今後は結果と共にそのプロセスを大切にし、社員教育の見直しに努めます」
「四、教育に携わるものとしての自覚とプライドを持つ社員による組織体制、営業体制を目指します。そのための人材育成には最大限の投資をしていくとともに、モラル・マナー・社会性のある会社組織を目指します」