入塾見込みの生徒は「弾」
上記の告発を行った東原優紀さん(仮名)も取材に応じ、自社の問題点を次のように整理する。
臨海セミナーでは日常的に、講師が塾生から学力の高い学校の友達を聞き出し、見込み顧客リストを作成する。営業活動に生かすためだ。「もちろんリストに挙げられた生徒たちは、自身の個人情報が組織的に集約されていることは知る由もないです」。リストの人物を弾丸に例えて「弾」と呼ぶ社員もいるといい、入塾の可能性が高い生徒は「熱弾」と呼ばれる。
講師と親しい塾生を中心に、雑談やアンケートの中から情報を集める。「学校で勉強ができる子トップ3を教えて」「中3で塾に通っていない友達は、費用的な問題があるのかもしれない。臨海の講習は無料体験だからそんな友達も来れるはず。君は生徒会長だから、そういう友達のことも考えてあげた方がいいと思うよ。ぜひ臨海の無料体験を紹介してあげてほしい。君にしか頼めないんだ」などと声をかける。
トーク集があり、実演研修もする。塾生には利用目的は伝えず、東原さんは「子どもとの信頼関係の悪用ですよね」と声を落とす。
リストの生徒には、「この前アンケートに書いてくれた○○君ってどんな子?君の友達なら一緒に授業をしたいな。これ(文房具などが入った入塾パンフレット)渡してくれると嬉しい」などと塾生に依頼し、コンタクトを図る。
「会社は生徒を人として見ておらず名簿としか見ていないので、いくら社内で働きかけても上には伝わらないです。上層部にはすぐに意識を変えて欲しい。塾の本道にかえって、正々堂々とやってほしい」
勧誘活動が過熱する背景には、地域単位で、入塾者数の「伸び率レース」があるためだ。
「下位だと翌週は出勤時間が早くなったり、休日返上で『動員リスト』(問い合わせのあった客や退塾者などの名簿)にガンガン電話営業をすることになります。なので、授業をアルバイトの大学生講師に頼み、その間に専任(社員)講師がひたすら電話をかけることもあります」
東原さんは「行き過ぎた営業を続けていけば、自分たちが損をする。評判も下がっていくと思う」と訴える。