論文筆者「"相関"関係と"因果"関係とは違うもの」
立憲民主党の党公式ツイッターが、一連のやりとりの動画を投稿すると、多くの注目を集めた。
焦点となった論文の筆者の一人で、米カリフォルニア大ロサンゼルス校助教授(医療政策)の津川友介氏は8日、ツイートを引用し、「私達は、原著論文(DiscussionのLimitation部分)にも、日本語版のプレスリリースにも『今回認められた関係が因果関係であるかどうかは分からない』と明記しています。また"相関"関係と"因果"関係とは違うものです。プレスリリースで『可能性がある』という表現を使っているのは、断定できないからです」と慎重な見方を示した。
研究は、15~79歳の男女約2万8000人を対象に今年8月末~9月末にネットで実施した。Go Toトラベルの利用経験と、過去1か月以内に新型コロナを示唆する5つの症状(発熱、咽頭痛、咳、頭痛、嗅覚・味覚異常)を経験していた人の割合との関連を調べた。
その結果、発熱や咳、頭痛を含めた計5項目すべてで、利用者のほうが有症率は高く、リリースでは「この結果は、Go To トラベル事業の利用者は非利用者よりも新型コロナに感染するリスクが高いことを示しており、Go To トラベル事業が新型コロナ感染拡大に寄与している可能性があることを示唆しています」とした。
一方で、今回の調査の限界として、次の課題も挙げた。
(1)Go Toトラベルの利用が直接的に新型コロナ症状の増加につながったという因果関係は断定できない。
(2)新型コロナ症状を持つ人が、必ずしも新型コロナに感染しているわけではない。
(3)Go Toトラベルの利用と新型コロナ症状の発生率との間の時系列的関係が不明。
(4)新型コロナ症状を持つ人が、その原因としてGo Toトラベルの利用を思い出しやすい可能性(思い出しバイアス)がある。
なお、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は9日、衆院厚生労働委員会で「Go Toトラベルの意義、政府がなぜやりたいのかは十分理解しています。しかし、今の時期に、しかも(感染の警戒レベルが)ステージ3の地域では、できればGo Toも含めて人の動きを止めるのは世界的な感染対策上の合理的なオプションだと思う」と述べた。