海運大手、商船三井の株価が、年初来高値を更新した。もともと海運業界は「コロナ禍でも業績好調銘柄」の一群として人気があったが、米国のバイデン次期大統領による追加経済対策の進展期待から、足元で「景気敏感株」として物色されているようだ。高値警戒感はあるものの、業績自体は安定しているだけにさらに上値を追う可能性もある。
2020年12月3日には前日終値比6.7%(188円)高の3010円まで上昇、コロナショック前につけた1月20日の2994円を上回り、19年12月30日(3035円)以来、約11カ月ぶりの高値となった。さらに12月7日朝方には前週末終値比2.3%(70円)高の3065円をつけ、19年12月16日の高値(3065円)に並んだ。利益確定売りに押されて終値は2948円だったものの、活発な取引の背後に投資家の大きな期待を感じさせた。翌8日の終値は2960円だった。
米国の動向との関係
新型コロナウイルスに対応するワクチンが、英国など世界で実用段階に入っていることは、具体的に景気回復をイメージできるため、商船三井のように業績が世界景気と連動しやすい企業の株には追い風だ。
一方で、ワクチンの普及を前に米国ではここへきてコロナ感染の再拡大が続いており、雇用など実体経済に深刻な影響を与えている。そのため、バイデン次期大統領は9000億ドル(約94兆円)規模とされる追加の経済対策に向けて動いている。12月4日(現地時間)の演説では「景気は失速しつつあり、議会は救済策に向けた行動が必要」と指摘し、追加の財政出動を早期決定するよう求めた。次期財務長官候補に積極財政論で知られるイエレン前FRB(米連邦準備理事会)議長を指名したことも株式市場にとっては歓迎すべき人事だった。日本でも菅政権による追加の経済対策が8日に決まった。「景気敏感株」である商船三井に買いが集まる流れになっている。
ただ、先述したようにもともと業績改善銘柄として人気はあった。特に2020年9月中間連結決算と21年3月期の業績予想を発表した後に上昇気流に乗った。期初(4月30日)時点においては通期の経常損益の見通しのみ公表し、コロナの影響で100億~400億円の赤字としていた。これを6月17日に油送船事業の回復を受けてプラスマイナスゼロに上方修正(その他の項目は引き続き「未定」)。しかし、9月24日には「前回発表比改善を見込むものの、下期業績見通しは現在精査中である」として経常利益を含めてすべて「未定」とした。そうして中間決算と同時に10月30日に公表した各項目出そろった通期の業績予想では、経常利益を400億円と見込んだ。前期比では27.4%の減益ではあるものの、期初の赤字予想からは一転して大幅な利益を確保できる見通しがついたというものだった。