徳島県と高知県を走る第三セクター鉄道、阿佐海岸鉄道の阿佐東線が2020年11月30日夜、ディーゼル車(気動車)を利用した運行を終えた。線路と道路の両方を走れる車両「DMV」(デュアル・モード・ビークル)導入のために、リニューアル工事を行うためだ。
沿線は過疎化が進み、地元の利用だけでは路線の維持は困難と判断。20年度内のDMV運行開始を目指しており、実現すれば「『世界初』の本格営業運行」。観光資源としての生き残りを図りたい考えだ。
「試験的営業運行」のJR北海道は本格営業運行を断念
DMVのベースになっているのはマイクロバスで、タイヤの内側に金属製の車輪を収納。線路を走る時に車輪が出てくる仕組みだ。(1)線路などの既存のインフラを活用できるため、鉄道に比べて導入コストが安い(2)鉄道に比べて燃費もいい(3)鉄道の定時性とバスの機動性の両方を備える、といった利点がある一方で、1台あたりの定員が20~35人程度で、1両で100人程度が乗れる鉄道に比べれば大量輸送が難しい点が課題だと考えられてきた。
07年には、JR北海道が網走と釧路を結ぶ釧網本線と国道244号線を走る「試験的営業運行」を始め、15年の本格的な営業運行を目指してきた。だが、JR北海道ではDMV以外の事故が多発。安全対策と北海道新幹線に経営資源を集中させるとして、14年にDMVの導入断念を決めていた。
阿佐海岸鉄道も12年にDMVの実証運行をしており、JR北海道とは対照的に営業運行にこぎ着けることになった。DMVが走る阿佐東線は、徳島市と県南部を結ぶJR四国の牟岐(むぎ)線の、さらに南方を走る路線。1992年に海部(かいふ、徳島県海陽町)-甲浦(かんのうら、高知県東洋町)間の8.5キロが開業した。すでにDMV車両3両が完成しており、DMV化に備えて11月にはJR牟岐線の阿波海南~海部間、1.5キロを阿佐東線に編入。海部駅は高架駅で車両を回転させて折り返すことができないため、隣の阿波海南駅で、そのスペースを確保するためだ。