菅義偉首相は2020年12月4日に記者会見を開いた。臨時国会の閉会にともなうもので、いわゆる「ぶら下がり」ではない正式な形の記者会見を国内で開くのは、首相就任直後の9月16日以来、約2か月半ぶり2回目。
20年は7月から自殺者数が前年同月を上回る状態が続いており、コロナ禍が影響している可能性もある。「ぶら下がり」では、記者の質問に答えずに一方的に発言して立ち去ることも多く、トップとしての情報発信のあり方を問う声も出た。
2月末~8月末に10回「記者会見」開いた安倍政権
安倍晋三前首相は、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化した2月末から8月末の退陣表明まで、40分~1時間程度時間を取って行う形式の記者会見を計10回開いている。その中には国民への「呼びかけ」も多く含まれていた。菅内閣では会見が少ない分、国民への発信が少ないとの指摘も根強い。
警察庁の自殺統計によると、20年10月の自殺者は2153人で、内訳は男性1302人で女性が851人。対して19年10月の自殺者は1539人(男性1073人、女性466人)。増加幅は39.9%にのぼる。男女別にみると男性21.3%、女性82.6%で、女性の増加が際立つ。
こういった状況を念頭に、政治ジャーナリストの安積明子氏は、菅氏がたびたび「国民の命と暮らしを守ることが政府の責務」と口にすることを指摘し、その上で
「この2か月間、総理は国民に対して、直接『もう少し頑張ってくれ』といった励ましの言葉をかけることはなかった」
などと記者会見の少なさを問題視。情報発信のあり方をただした。
「これからなお厳しい状態が続くと思うが、これからやはり、国民に対してそういう言葉をかけてくださるのか、それとも、やはり今までのように、例えば会見は国会が終わるといった節目節目でしかしないのか、どちらなのか」
コロナについては「もっとしっかりと発信できるようにしていきたい」
菅氏は、内閣の方針は官房長官が平日は1日2回記者会見を開いて説明しているほか、閣僚が閣議後に記者会見を開いているとした上で、コロナについては「もっとしっかりと発信できるようにしていきたい」と述べた。ただ、これには「政権としても」という「枕詞」がついており、菅氏自身による記者会見の機会が増えるかは、必ずしも明らかではない。
「私自身も、機会があるときに、そこはぶら下がりなどでメッセージを発出させていただいている、そうしたことも含めて、これから、政権としても、そうしたコロナをはじめとする対応策については、もっとしっかりと発信できるようにしていきたい」
9月の記者会見は30分にわたって行われ、指名された記者は5人にとどまった。今回の会見時間は約50分で、フリーランスや外国メデイアを含む12人の記者が指名された。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)