アンジャッシュ・渡部建さんの記者会見をめぐり、「マスコミ批判」が止まらない。
会見を見ていたツイッターユーザーからは「同じ質問ばかり」「密すぎるやろ」など、その問題点を指摘する声が殺到。背景には、会見が「囲み取材」形式で行われたこともあるとみられる。ウィズコロナ時代の大規模な芸能会見として、6月に行われた手越祐也さんの記者会見と比較。2つの現場を訪れた記者が「渡部会見」のポイントを振り返る。
渡部は「囲み」、手越は「一問一答」
「記者が繰り返し繰り返し同じ質問をして、見てるこちらが不機嫌になった」
「おんなじ質問何度もして、他の記者の質問聞いてなかったの?」
2020年12月3日、都内で行われた渡部さんの会見を受け、ツイッター上で目立ったのは芸能レポーターへの批判だ。実際に「多目的トイレ」や「ガキ使」、妻の佐々木希さんに関する質問などは何度も繰り返され、その度に渡部さんも同じような答えを返していた。
こうした構造を生み出した一因として、今回の会見が「囲み取材」方式だったことが考えられる。囲み取材はその名の通り、記者が取材対象者の周りを囲むようにして取材する。お互い距離が近いため、質問なども気軽に投げやすい。
今回の会見では、渡部さんの周囲に芸能レポーターが配置され、その後ろで記者・カメラマンが原稿を書いたり写真を撮ったりする、という形がとられた。しかし、渡部さん付近の芸能レポーターは何度も質問できる一方で、前に出られない記者は聞きたいことがあっても聞くことができない。結果として、同一のレポーターによる質問が長く続いてしまった。
一方で、同じコロナ禍で注目された大規模な芸能会見という観点で、6月23日に行われた手越さんの会見はどうだったか。渡部さんの会見は不倫報道後の「謝罪会見」の意味合いが強く、手越さんの会見はやはり週刊誌報道を受けたものではあったが、ジャニーズ退所の経緯と「意気込み」を語るものだった、という違いはある。また、大前提として2人の回答の巧拙もある。とはいえ、そもそもの進め方の部分に、両者の「差」を生む素地があったのではないか。
まず、手越さんの会見は「囲み取材」ではなく、会場の各席に座った記者の質問に手越さんが答えるという「一問一答」形式だった。そのため、比較的多くの記者が質問することが可能だった。さらには、インターネット上で会見を見届けているファンからの質問にも答えていた。
待機会場より狭い本会場
また渡部さんの会見では、質問をするレポーターの声量、あるいはマイクの音量が小さく、レポーターが何を聞いたのかが、現場で十分に共有できない状況にあった。
手越さんの会見では各質問者にマイクが手渡され、いずれも十分なボリュームで質問内容を聞くことができた。記者は座席でメモを取りながら、質問などをしていた。
新型コロナウイルスの「密」対策などでも、議論となりそうな点がいくつかあった。渡部さんの会見では、受付時に新品のマスクと顔全体を覆うフェイスシールドが手渡され、いずれも着用するよう呼びかけられた。受付を済ませた記者は、会見場の隣にある待機会場で待機し、指定時刻になったら隣室の会見場に移動した。待機会場には椅子が一定の間隔で配置され、そこに座って待機をするよう指示された。
ただ、実際の会見場は待機会場よりも面積が狭く、相対的に密集しやすい環境にあった。会見中、渡部さんの近くに陣取るレポーターは基本的にフェイスシールド、マスクともに着用していた。ただ、その後ろのカメラマンや記者は、マスクをつけていてもフェイスシールドは外している人がほとんどだった。特にカメラマンは撮影時にファインダーや画面を覗き込んで「映り」を確認する必要があるため、フェイスシールドをつけると作業の障壁となっていた。また、渡部さんはマスクをせず、マウスシールドのみを着用していた。
指定された場所に「ベタ座り」
会見場で記者・カメラマンは、床に緑色のテープで貼られた「バツ印」を各自のポジションとし、そこから撮影や作業をするように指示された。カメラマン・記者の中で、折り畳みの椅子などを持参していない人は、床に直接座りながら作業せざるを得なかった。いわゆる「ベタ座り」だ。
「ベタ座り」エリアの隣には作業用の座席と長机が設けられていたが、その数は限られていた。会見が始まると、カメラマンは指定されたポジションを離れて渡部さんを撮るというケースが当然のように発生した。中には、渡部さんの顔近くまで行って撮る人もいた。
手越さんの会見では「待機会場」はなく、はじめから本会場へと誘導された。会場内では座席が用意され、基本的にそこから撮影・作業を行うことができた。これとは別に、座席前方にはカメラマン向けの「ベタ座り」エリアも設けられ、「シャッターチャンス」である手越さんの入退場などにはカメラマンによる「密」な状況も発生した。ただ、今回の渡部さんのように、手越さんが話している際に顔近くまで移動して撮るようなカメラマンはいなかった。なお、マスクは配られたが、フェイスシールドは用意されなかった。