「今日一部のマスコミに僕の訃報が流れたらしい」「どうしてそんなニュースが流れたのか」――。日本サッカー協会相談役の川淵三郎氏(84)が2020年12月2日、自身に関する事実無根の情報を困惑気味に否定した。
川淵氏が死去したとの報道があったというが、なぜそんな情報が流れたのか。発信元を探った。
【速報】「川淵三郎氏が死去を公表」
SNS分析ツール「ソーシャルインサイト」で、12月2日~3日にかけて「川淵三郎 (死去 OR 死亡)」を含むツイートを調べると、まとめブログ「デジサカ」のアカウントの投稿が最初に見つかる。
2日12時9分に「【速報】Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏が死去を公表、死因は新型コロナウイルス」とツイートし、自身のブログのリンクを添えている。
ブログにアクセスすると、複数のまとめブログの記事タイトルが並ぶページに飛ぶ。デジサカは他サイトへの送客を担う、いわゆる「アンテナサイト」のようだ。ツイッターでのフォロワー数は5万4000に及ぶ。
半年前の記事を速報で報じる
記事ページに移動すると、まとめブログ「サムライゴール」が2日10時44分に公開していた。引用元はネット掲示板「5ちゃんねる」のスレッド。「【サッカー】Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎氏が死去を公表、死因は新型コロナウイルス」とのタイトルで同日に作られていた。
投稿は、ニュースサイト「サッカーダイジェスト」の20年4月10日付記事「『余りにも身近で同年代だけに...』 川淵三郎氏が新型コロナによる親友の死を告白。やり場のない怒りを露わに」を全文転載している。半年以上前の記事を、中身はそのままに、見出しだけ変えてスレッドタイトルにしている。
書き込みはわずか2つとまったく話題になっていないが、「サムライゴール」が【速報】と銘打って記事化し、フォロワー数が5万を超える「デジサカ」がツイッターで拡散したことで、一気に広がったとみられる。
ツイッターでの反応の多くは、「これは悪質」「アクセス稼ぎの酷い見出し」と"ミスリード"扱いだったが、見出しだけで判断したのか、一部は「ま、マジかよ」「ご冥福をお祈りいたします」などと鵜呑みにしてしまったようだ。
川淵氏は対応を迫られた。2日夕にツイッターを更新し、「今日一部のマスコミに僕の訃報が流れたらしい。マスコミから秘書に確認の電話があって彼女が動転して僕に電話して来た」と死亡説を否定。「どうしてそんなニュースが流れたのか分からないけど以前にも一度あったという。どうか東京オリパラが済むまでは生かしておいてください」と懇願した。