2020年の「ユーキャン 新語・流行語大賞」が12月1日に発表された。年間大賞は「3密」で、受賞者は東京都の小池百合子知事(68)。また、「3密」を含めて計10個の言葉がトップテン入りを果たしたが、中でも異彩を放ったのが「フワちゃん」だ。
通常、お笑い芸人が流行語大賞に選出される際には、そのギャグやフレーズなどが対象になることが多いが、フワちゃん(27)は自身の名前で受賞。そのことを流行語大賞の司会を務めた宮本隆治アナウンサー(70)に指摘されると、フワちゃんは、「あたしが2020年のリーダーってこと? 超うれしい!」とニッコリ。加え、受賞の際には得意のY字バランスで会場内を沸かせるなど、終始ご満悦な態度で授賞式に臨んだのだった。
「あたしが2020年のリーダーってこと?」というのはフワちゃん流のビッグマウスにしても、確かに、今年の活躍は目覚ましいものがあった。そして、その結果としての流行語大賞選出となれば本人としては大満足だろう。ただ、その一方で、フワちゃんに襲い掛かるかもしれないジンクスがあることを忘れてはならないのではないだろうか。
流行語大賞を最後に消えた、お笑い芸人たちの死屍累々
そのジンクスとは、ズバリ、「流行語大賞を受賞したお笑い芸人は翌年、消える」というもの。1984年に始まった流行語大賞の長い歴史の中、そのジンクスに襲われたお笑い芸人は数知れない。
試しに振り返ってみると、まず思い浮かぶのは、2014年の「日本エレキテル連合」だろう。「ダメよ~ダメダメ」で年間大賞を受賞するも、翌年以降は伸び悩んだ。
また、2012年には「ワイルドだろぉ」でスギちゃんが年間大賞を受賞するも、その後は「撃沈」と言って良い状態に。さらには、2008年には「グ~!」でエド・はるみさんが年間大賞を受賞したが、やがてすっかり見かける機会が減ってしまった。
2017年に「35億」でトップテン入りしたブルゾンちえみさんは少し毛色が違うが、やはり芸人を引退し、本名の「藤原史織」名義に転身。さらにもう一つ上げるなら、2019年トップテンの「闇営業」――。
いずれにせよ、流行語大賞は芸人たちにとって、「鬼門」とさえ言える賞なのである。
「本人の名前で受賞」という、フワちゃんの「特異性」
だが、ことフワちゃんに関しては、その例外になる可能性もある。
というのも、他のお笑い芸人は「ギャグ」「決め台詞」という「一発芸」的な要素で受賞している。こうしたタイプの芸人は、受けると一気に人気者になるものの、飽きられるのも早いのはご存じのとおり。
しかし前述したとおり、フワちゃんは自身が放った決め台詞ではなく、本人の名前で受賞しており、これまでのジンクスの対象者とは違う要素を持ったお笑い芸人と言える。そもそも芸名とはいえ、あだ名や名前の一部分ではなく、人名やグループ名それ自体がトップテン入りしたのは、芸能人では実はAKB48(2010年)以来だ。
加え、フワちゃんに関しては、授賞式での力量も光っていた。というのも、2020年の授賞式は例年と異なり、新型コロナウイルスの流行の影響で招待客が少なく、会場にいたのはマスコミ関係者がほとんどだったのだが、この「アウェイ」な状況でも、フワちゃんは笑いを取っていたからだ。
本人の決め台詞以外で受賞すれば消えない!?
2019年以前の流行語大賞の授賞式では、マスコミ関係者と同数、ともすればそれ以上の招待客が招かれており、受賞者が登場するたびに会場内は招待客の大きなどよめきに包まれていたほか、受賞者がコミカルな態度を取れば大笑いするなど、大きな反応を見せていた。その一方で、マスコミ関係者は仕事として来場しているため、受賞者が現れてもどよめくことはないのはもちろん、笑い声をあげることもほとんどないのだ。
そして、その招待客がほとんどいなかった2020年の流行語大賞の授賞式。しかし、フワちゃんは壇上に登場するなり持ち前の明るさで場内を盛り上げ、時折、マスコミ関係者から大きな笑いを得るなど大奮闘。他の受賞者の登場時は比較的静かだった会場内を沸かせたのだった。
なお、これらの状況を勘案すると、2020年にフワちゃんと同じくトップテン入りしたお笑い芸人のヒロシさん(48)も、消滅の憂き目には合わなくて済むのではないだろうか。「ソロキャンプ」でトップテン入りを果たしたヒロシさんは、受賞の言葉として、自分が放った言葉ではないと恐縮しつつも、2003年に大流行するも流行語大賞には選出されなかった『ヒロシです』の決め台詞を挙げて、「何で今さらだと、このように思っておりますけども」とボヤいて見せ、会場内を沸かせたのだった。
そう考えると、フワちゃんとヒロシさんの受賞は、2020年以降、「お笑い芸人の流行語大賞」という一ジャンルに、新たな「定説」が誕生する兆候であるようにも見える。これら、2人が今後、「お笑い芸人が受賞しても、本人の決め台詞以外で受賞すれば消えない」とのジンクスを確立する可能性は、決して低くはないのではないだろうか。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)