「在日問題」も扱ったアスリートのCM動画をナイキジャパンがユーチューブ上などに投稿し、様々な声が寄せられている。
その内容に称賛が上がる一方、反発も出ているが、動画投稿には、どんな意図があるのだろうか。ナイキ側に話を聞いた。
「わたし浮いてる?」「ここにいちゃダメなの?」と悩む
「ときどき考えるんだ」。トレーニングなどで汗を流すアスリートの少女が、こうつぶやく。
この2分間の動画「動かしつづける。自分を。未来を。」は、2020年11月28日にアップされた。
プレスリリースなどによると、動画は、アスリートの実体験に基づいて作られ、差別やいじめを受ける10代のサッカー少女3人がスポーツを通じて自我に目覚めていく様子を描いた。
うち1人は、チマチョゴリの民族衣装も着る在日韓国・朝鮮人らしき少女、もう1人は、黒人らしき少女だ。
3人は、「わたしって、ナニモノ?」「普通じゃないのかな」などと自らのアイデンティティに悩む様子も見せる。
在日韓国・朝鮮人らしき少女は、「現代の在日問題を考察する」と題した架空のネットニュースに目を通す。また、黒人らしき少女は、テニスプレーヤーの大坂なおみ選手が黒人差別に異議を唱える動画を熱心に視聴する。そのコメント欄には、「世界で活躍するアスリートとして素晴らしい」との意見の一方で、「スポーツにこの話を持ち込まないで欲しかった」「彼女はアメリカ人?日本人?」といった書き込みもあった。
自らも差別やいじめに晒された3人は、「わたし浮いてる?」「ここにいちゃダメなの?」「気にしないフリ、しなきゃ」などと自問自答する。
「全ての人々に対する包摂性、敬意と公平な対応を訴える」
しかし、こうした日常が当たり前だと思っていた3人は、スポーツを通じて、「でも、そんなことないかもね」「ないね」「ないでしょ」と笑顔になる。そして、サッカーでの活躍とともに、「動かしつづける。自分を。未来を。」というメッセージが打ち出される――ストーリーだ。
この動画は、12月1日夕現在で900万回以上も再生されるほどの反響を集めている。ツイッター上などでは、マイノリティに寄り添った内容で感動したといった声のほか、差別などのある日本社会が悪いと言われているようで不快だとの声も一部であった。
動画について、ナイキジャパンのシニアマーケティングディレクターのバーバラ・ギネさんは、「ナイキは長い間、少数派の声に耳を傾け、支え、ナイキの価値観にかなう大義のために意見を述べてきました。スポーツにはより良い世界がどのようなものかを示し、人々の力を合わせ、それぞれのコミュニティでの行動を促す力がある」などとプレスリリースで説明している。
ナイキジャパンの広報は12月1日、J-CASTニュースの取材に対し、CMの意図だけに絞って次のようにコメントした。
「このフィルムの目的は、若者が自分の望む変化を生み出し、自らの未来を形成するために力づける手段としてスポーツを推進することです。私たちは、スポーツがより良い世界がどのようなものであるかを伝え示す力を持ち、世界を前進させるポジティブな変化を促す原動力になると考えています。ナイキは声を大にしながら全ての人々に対する包摂性、敬意と公平な対応を訴えていきます」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)