54歳のマイク・タイソンは、なぜ世界を熱狂させるのか 「栄光」と「転落」にみるボクシング人生

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トラブルメーカーとしてダーティーなイメージが...

   ダグラス戦での敗戦後、タイソン氏がリングで再び輝きを放ったのはほんのわずかな時間だった。96年3月にフランク・ブルーノ(英国)を破りWBC王座を獲得し9月にWBA王座を獲得。その後、イベンダー・ホリフィールド(米国)にタイトルを奪われ、ホリフィールドとの再戦で失格負け。この再戦でタイソンはホリフィールドの耳を噛みちぎり、「耳噛み事件」としてボクシング史に刻まれている。

   「耳噛み事件」以降もリングの内外で自身をコントロールすることが出来ずトラブルが絶えなかった。トラブルメーカーとしてダーティーなイメージがつきまとい、その後は世界のベルトを巻くことはなかった。「栄光」と「転落」。タイソン氏のボクシング人生は波乱続きだったが、ボクシングの技術に目を向けると、洗練された防御技術、相手の急所を的確に打ち抜く技術は歴代のヘビー級王者のなかでもトップクラスだろう。

   タイソン氏は完成されたファイターだった。アマチュアでしっかりとキャリアを積み、米国五輪予選の決勝まで進んだ実績を持つ。トップアマからプロに転向するも世界王座に初挑戦するまで27試合をこなしている。天性のパンチ力に加え、卓越した防御技術とステップワークは実践で培ったもので、これら豊富なキャリアがタイソン氏のボクシングの「完成度」を裏付けている。パワーだけでない世界最高峰の防御技術。そして巨漢ボクサーをなぎ倒す強烈なダウンシーン。全盛期のタイソン氏は何もかもが異次元だった。

   SNS上での動画配信から始まった今回のタイソン氏の復活劇。海外の専門メディアには批判的なものもみられるが、海外メディアの論調はおおむね好意的である。54歳にしてなお「鉄人」であり続けるタイソン氏は、リングに復帰した理由について「人々を励ますため」と語っている。新型コロナウイルス関連の暗いニュースが続くなか、世界のボクシングファンが待ちわびたレジェンドの復帰。タイソン氏のパンチひとつひとつが強いメッセージとなって世界中に届けられたことだろう。

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