外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(27)感染が再拡大した欧州の「いま」と日本の「あす」

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北大の遠藤乾院長が語る欧州の今

   独仏のお2人に現地の情勢をうかがったあと、11月22日に、北大公共政策大学院長の遠藤乾さんにZOOMでインタビューをした。遠藤さんはEU研究の第1人者だ。

   遠藤さんはこの秋の特徴を、「最初に感染が激増したところに第2波が戻ってきたうえに、第1波で割合に逃れられた旧東欧や北のバルト3国に感染が拡大している」と分析する。

   寒気到来は感染拡大の要因の一つだが、それだけではスペインの再拡大の説明がつかない。共通のパターンを見ると、バカンス中は家族単位で行動し、ある程度は持ちこたえていたが、9月の新学期で学校が開き、そこで感染した学生らが家に帰って家族らに感染が拡大するという類型が考えられる。ベルギーがその典型例だ。

   さらに首相がマスク着用を義務化せず、国政選挙を控えて厳しい制限をしなかったポーランドなど、国によって個別の事情は異なる。比較的マスクの効果が見られたドイツ、イタリアでは感染拡大までに時差があり、ドイツは充実した医療態勢に助けられ、相対的にはまだ持ちこたえている。

   こうした欧州の状況を前提に、遠藤さんは、欧州の今は、日本の「これから」を暗示している、と指摘する。

「春先の感染時には、医療従事者の踏ん張りもあって、日本も何とか持ちこたえた。ICUの逼迫度にも、まだ余裕はあった。しかし、今の欧州の状況を見ていると、このまま放置すれば、日本でも今後、厳しい状況が待ち受けていると思わないわけにはいかない」

   最も大きな懸念材料は、医療従事者の精神的・肉体的な疲弊が進み、瀬戸際まで追い詰められていることだ。

   第1波の時にはフランスの病院を訪れたマクロン大統領に医療従事者が抗議した。ベルギーでは、ブリュッセルの病院を訪れたウィルメス首相を、沿道に並ぶ医療従事者が、一斉に背を向けて抗議の意思表示をした。だが、その後も劇的に改善したという国は少ない。

   ツイッターでは、「バカンスにも行かず、我慢して仕事を続けてきたのに、もっと逼迫した状態になってしまった」という嘆きや失望の声が流れ始めている。

   日本では、医療従事者が表立って政治家に抗議するという場面は少なかった。だが、その裏に隠された疲弊や不満を見のがすべきではない、と遠藤さんはいう。

「正しく恐れるというのなら、どこに最も大きなコロナ禍のしわ寄せが行っているのかを、考えるべきでしょう。医療や福祉介護の現場に、パブリック・セクターがもっと支援すべきです」
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