外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(27)感染が再拡大した欧州の「いま」と日本の「あす」

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「ソフト」化したロックダウン

   石村さんによると、今回のロックダウンは春とはかなり様相が違っているという。

   前回は、例外として認められる外出は買い物や犬の散歩などに限られ、しかも「1時間以内、自宅から1キロ圏内」に限られていた。このため、町はゴーストタウンのように人影が絶え、独りで出かけるのも怖いほどだった。

   今回は時間、範囲といった厳しい行動制限はなくなり、町で見かける買い物客は多かった。

   この制限緩和は、ロックダウンがパリなど大都市だけでなく、全土に拡大したことが原因だろう、と石村さんは言う。地方都市では、1キロ以内では買い物もままならず、車で遠出をする必要があるからだ。外出する場合には、何時にどのような目的で外出するのかを紙に印字するか、スマホに入力して、警察に職務質問をされる場合には、それを見せる必要がある。だが、大幅に逸脱していなければ、それほどチェックは厳密ではない、

   以前は完全に閉店したレストランやバーも、今回は深夜を除き、持ち帰りが認められている。

   通勤には、職場からの証明書が必要で、公共交通機関のチェックで携行していなければ罰金が科せられる。だが世論調査で働き手の45%はテレワークをしているというデータもあり、フランスでも在宅勤務が定着しつつあるようだ。国鉄やパリ市内のバス、地下鉄はかなり減便になったという。

   前回と違うのは、ウイルスは中国発ということを理由に、一部で「アジア人狩り」の暴力沙汰が起きていると伝えられていることだ。日本大使館からも、邦人同士で固まらず、目立つ格好もしないように、という注意が届く。

   だが前回も書いたように、石村さんの自宅はパリ西部でセーヌ右岸、ブローニュの森に隣接する16区にある。石村さんの家はその南端に位置し、すぐ窓の下にマルシェと呼ばれる路上の朝市が立つ閑静な住宅地だ。居住者は「中の中」から「中の上」くらいの層の人が多い。

「この周辺では、暴力事件などは見たことも聞いたこともない。アジア人が被害を受けたとされる場所は移民が多く、失業率も高いパリ郊外。ロックダウンでさらに職を失い、不満やストレスが、はけ口を求めて暴力に向かうのかもしれません」
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