外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(27)感染が再拡大した欧州の「いま」と日本の「あす」

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パリ在住の石村清則さんに聞くフランスの今

   ドイツと同じく、夏にいったん沈静化したコロナ禍が、秋から再び猛威をふるい、ロックダウンを余儀なくされたのがフランスだ。

   マクロン大統領は10月28日、コロナの感染再拡大が深刻化していることを認め、30日から少なくとも1カ月、全土で外出禁止令を課すと表明した。

   フランスの第1回目の外出禁止令は3月から2カ月間続いたが、その後は半年間のブランクがあった。マクロン大統領は夏以降、外出禁止令に関し、「回避するためにあらゆることをする」として経済活動再開を優先させてきた。だが、1日の感染者数は10月に5万件超、死者も1日500人を超えるペースが続き、座視できないまでになった。

   マクロン大統領は「11月半ばには集中治療室が限界を迎える」と危機的な状態にあることを訴えた。春と違い、感染は全土に広がった。もう重症患者を、比較的感染していない地域に搬送することも難しい状況になった。これ以上放置すれば、春の第1波よりも大きな犠牲が出る、という苦渋の決断だった。

   だが、ドイツと同じく、ロックダウンといっても、今回は第1回と多少の違いがあった。

   カフェ、レストランなど「必要不可欠でない」商店はすべて閉鎖する。食料品の買い出しといった例外を除き、市民の外出も禁じ、違反者には罰金を科す。

   だが、前回と違って、保育所、幼稚園から高校までの学校は閉鎖しなかった。

   職場には可能な限り、テレワークを要請する一方、工場や農業、建設業などでは現場で働くよう求めた。経済への打撃を最小限にしたい思いがにじんだ方針だろう。

   実際の生活はどうだったのだろう。11月14日、パリ在住37年の石村清則さんにZOOMでインタビューをした。

   石村さんは私の高校同期で、パリ・インターナショナル・スクールで、第一言語として日本語を選択する生徒に、文学作品などを通して日本語を教えている。石村さんには、やはりこのコラム6回目の欧州編でお話をうかがった。石村さんはまず、ロックダウン宣言前後の状況について語り始めた。

「7~8月のバカンスが終わった9月から10月にかけ、感染がどんどん増えた。10月30日のロックダウン前後は、毎日3~5万人の感染が確認され、最高で8万5000人にもなった。第1波は特定の地域に感染が広がり、そうでない地域もあったが、今回はフランス全土に感染が広がっている。専門家が指摘するように、都市部の人々がバカンスで、感染が広がっていない地域に出かけた影響が大きいのだろう」

   9月からは新学期で学校も始まり、20代前後の若者が大学に戻った。その人々が家庭に戻るなどして、感染は全世代にまで指数関数的に拡大したという。

「フランスのクリスマスは、日本の正月に匹敵する大切な行事。家族が集まれないと、不満は爆発する。政府はそれを見越して、クリスマスの時期には制限を緩めようという狙いがあるのではないか」

   その言葉を裏付けるように、カステックス首相はインタビュー直前の13日に記者会見をし、12月1日までとしていた外出禁止を延長する一方,「我々の目的は、クリスマスには規制を緩和することだ」と述べた。

   この時点で、国内の入院患者は春のピークを超える3万2千人に達していた。首相は、「30秒ごとに1人がコロナで入院し、3分ごとに1人が集中治療病床に運ばれている」と警告した。亡くなる4人に1人の死因がコロナという最悪事態だ。

   死者はその後も増えて5万人を超えたが、ロックダウンの効き目が出たのか、11月下旬になると、最大で6万人超だった1日当たりの新規感染者は1万人を切るまでになった。

   マクロン大統領は11月24日のテレビ演説で、今後ロックダウンを3段階で緩和することを明らかにした。

   それによると、28日から生活必需品以外の商店も営業を再開し、1日当たりの新規感染が5千人未満という条件を満たせば、12月15日にロックダウンを解除し、夜間外出禁止令に切り替える。さらに1月20日にはレストランや屋内スポーツ施設の営業も再開する、というシナリオだ。クリスマスの季節に向けて、制限と緩和を使い分ける戦略が透けて見える。

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