全日本空輸(ANA)が航空機用のバイオ燃料を用い、二酸化炭素(CO2)排出量を既存のジェット燃料に比べ約90%削減する取り組みを始めた。
航空機用のバイオ燃料は「Sustainable Aviation Fuel(SAF、持続可能な航空燃料)」と呼ばれる。ANAは2020年秋、世界有数のSAF製造会社でフィンランドが本社のNESTE(ネステ)と中長期的な戦略的提携の覚書を結んだ。ANAは既に10月からSAFを調達しており、日本発着の定期便を運航する航空会社としては初めてとなる。
シンガポールから調達、日本発の定期便で使用
ANAは11月6日、SAFを混ぜたジェット燃料を米ボーイングの中型旅客機「787-9」に給油する様子を羽田空港で公開した。この燃料を積んだ同機は羽田から米ヒューストンへ向かった。
今回のフライトを受け、ANAは「これからも環境リーディングエアラインとして、CO2削減をはじめとした環境問題の解決に積極的に取り組んでいく」とのコメントを発表した。
ネステとの覚書に基づき、ANAは2023年以降、同社がシンガポールの製油所で商業生産するSAFを調達し、日本発の定期便で使用していくとしている。ANAが調達したSAFの数量は「東京-ロンドン間をボーイング777-300ER型機で運航した場合、片道換算で約60便に相当する」という。
国際的な第三者認証機関「ISCC」のライフサイクル評価によると、日本までの燃料輸送を含め、SAFは既存のジェット燃料を使用した場合と比べ、約90%のCO2削減効果があるとされる。
ネステが製造するSAFは、廃食油・動植物油脂などを原料としている。主要な航空機・エンジンメーカーが定めるジェット燃料の国際規格を満たしており、既存のジェット燃料と同じ安全性も担保されているという。
ANAは2050年までに航空機の運航で発生するCO2排出量を、2005年比で50%削減することを目標に掲げている。