各種報道によると2020年10月7日、和歌山県と県内7市町村がJR西日本に対し、長距離列車「WEST EXPRESS銀河」の誘致について要望した。もし、夜行列車での運行が実現するとなると大阪~紀南間の夜行列車が復活することになる。
長距離列車「WEST EXPRESS銀河」は和歌山県に乗り入れる?
10月7日、和歌山県と県内7市町村がJR西日本に対して「WEST EXPRESS銀河」の誘致要望書を提出した。JR西日本の和歌山支社も同県への乗り入れについて、社内で働きかけるという。他管区も同様の要望があることから、し烈な「誘致合戦」になりそうだ。
「WEST EXPRESS銀河」は2020年9月にデビューしたJR西日本の長距離列車だ。車内はリクライニングシートからノビノビ座席「クシェット」、個室寝台車両を備え、昼行列車、夜行列車どちらにも対応する。またフリースペースも設置され、一般の特急列車とは異なった列車旅が楽しめるのも特長だ。
ダイヤは9月~11月までが京都駅・大阪駅~出雲市駅間を夜行列車として、12月~2021年3月までは大阪駅~下関駅間は昼行列車として運行される。「WEST EXPRESS銀河」は直流型電車となり、乗り入れは直流電化区間に限られる。幸いなことに大阪~紀南間は直流電化区間なので技術的には乗り入れ可能だ。
2000年代まで大阪~紀南間の夜行列車はあった?
もし、大阪~紀南間の「WEST EXPRESS銀河」運行が実現し、京都駅・大阪駅~出雲市駅間のように夜行列車で運行されるとしたら――。ところでJR化後、大阪~紀南間において夜行列車は存在したのだろうか?
答えは一応「YES」となる。1987年5月号の時刻表を見ると、天王寺23時発新宮5時01分着の夜行列車が設定されていたことがわかる。ただしこの列車はベッドがある寝台車ではなく、ボックスシートが並ぶ2扉デッキ付きの急行型電車での運行だった。乗車記を読むと一般客だけでなく釣人も愛用していたという。
1990年に新大阪駅始発になったものの、1999年10月のダイヤ改正で紀伊田辺駅止まりとなった。その後も週末や多客期には新宮駅へ足を伸ばしていたが、2000年10月のダイヤ改正で新宮への延長運転は中止され、事実上、夜行列車ではなくなった。以降、大阪~紀南間において夜行列車は設定されていない。
ともあれ、昔の時刻表を見ながら、「WEST EXPRESS銀河」が紀勢本線を走るシーンを想像すると胸が躍るのは筆者だけだろうか。
(フリーライター 新田浩之)