「桜を見る会」前夜祭の問題で、安倍晋三前首相の周辺が、ホテルに支払った費用総額と会費との差額を補填したことを認めたと報じられ、その事情を巡ってネット上で様々な憶測も出ている。
安倍氏には、事務所から誤った情報が伝えられていたという。こうしたことの真偽はよく分かっていないが、なぜこんな展開になったのだろうか。
「検察への菅政権リークは、うわさに過ぎない」
安倍氏の周辺が補填を認めたと報じたのは、2020年11月24日の毎日新聞ウェブ版記事などだ。
それらによると、安倍氏には、補填の事実が伝えられておらず、23日になって初めて秘書が安倍氏に報告したという。補填額は、15年からの5年間で916万円に上るといい、ホテルから安倍氏代表の資金管理団体にあてた領収書は、廃棄された疑いがあるとも報じられている。
報道によると、秘書らを事情聴取した東京地検特捜部は、政治資金規正法違反(不記載)の罪などでの立件を目指している。
安倍氏は首相時代、すべて参加者の自己負担と国会答弁で強調していた。なぜ今になって、周辺が補填を認めるような事態になったのだろうか。
事情に詳しい関係者は26日、J-CASTニュースの取材にこんな見方を示した。
「一部で、安倍さんの復権を警戒した菅義偉政権による検察へのリークという陰謀説のうわさが流れています。本当のところは分かりませんが、菅さんの責任問題にもなりかねないので、それはないかもしれません。検察は、最近いい話がないので、検察の威信にかけても見逃せないと考えたのだと思います。検察は、弁護士などからあった刑事告発を放置することができないため、年内に決着させようと考えたのでしょう」
「証拠を認めざるをえず、安倍さんには誤算では」
安倍氏側の差額補填は、立件されても微罪にしかならないのではないかと、この関係者はみる。
「補填額を考えると、前夜祭の食事費用は、実質で8000円ぐらいになります。参加者がごちそうだと思えば、公選法の買収に当たる可能性が出てきますが、ホテルでこの額では、5000円の会費を支払ったとしても、『料理はたいしたことない』『むしろ高い』といった感想も多いはずです。それでは、買収には問えないので、不記載などの罪で略式起訴されて罰金か、起訴猶予などになるのではないでしょうか」
その場合、安倍氏は、連座制の適用はなく、秘書らが知識不足で未熟だったとして罪を被るだけで終わるのではないかとした。
ただ、安倍氏にとっては、誤算だったのではないかと関係者は指摘した。
「安倍さんにとって、前夜祭のことはそっとしておいてほしいと思っていたのではないでしょうか。検察にとっては、安倍さんが首相を辞めたので動きやすかったのだと思います。領収書などの証拠があれば、安倍さん側も認めざるをえません。菅さんにとっては、ある意味すっきりした形になりましたが、安倍さんの評価は下がりましたので、これで再登板はなくなった可能性もありますね」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)