高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「コロナ第3波」なぜ準備しなかったのか 残る予備費、埋まらぬGDPギャップ

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   今コロナ第3波で右往左往している。コロナで避けるべきは医療崩壊だ。しかし、このままで行くと、医師会からも医療崩壊になるという声が出ている。

   たしかに、今の日本では感染者数は過去最高という水準であるが、欧米と比べると、一桁二桁も低いが、なぜいまごろ医療崩壊かという基本的な疑問をもっている。

  • 「医療崩壊」に備えて、できることはなかったか
    「医療崩壊」に備えて、できることはなかったか
  • 「医療崩壊」に備えて、できることはなかったか

事前予測と財源があれば、多くの問題を解決できる

   医療について、短期的には、供給サイドの提供できることは医師、看護師、放射線技師、薬剤師などの医療従事者や、人工呼吸器、ECMOなどの医療機器などによって制限がある。中長期的には、設備投資や人材投入によって、供給サイドを引き上げることができ、医療崩壊への対応策となる。

   一方、需要サイドについては、感染の急増があると抑制が困難になる。短期的には、経済封鎖などの措置が執られるが、これは経済停滞を招き、大きな社会コストになる。

   一般のサービスであれば、超過需要分は実施されないで済む。需要側としては不満であるが、仕方ない。しかし、医療の場合には、人の生死に関わってくる場合もある。

   予測できない大地震による災害では、医療崩壊がおこることもある。

   ここで、筆者のモットーを示そう。事前に予測が出来て、財源があれば、多くの問題を解決できる。

   この冬に第3波がくるというのは、医療関係者をはじめとして多くの識者から、春頃から指摘されていた。筆者も程度は不明であるが、第3波が来るのは確実と言ってきた。

   第3波がきても医療崩壊させないための対応を含めて、4月(2020年)に1次補正をし、5月の2次補正では、新型コロナウイルス感染症対策予備費として10兆円が作られた。今になって、財源不足はありえない。当時、10兆円予備費を巡って、大きすぎるという批判が野党や財政関係者からあった。そして、結果として、予備費はまだ5兆円以上も残っている。

   他方、医師会側から、今回の第3波で医療崩壊懸念が発せられたが、供給サイドとしてこの半年程度どのような対策を講じてきたのかをこちらから聞きたいくらいだ。それに対して、厚労省は、財源を含めてどのように対応してきたのだろうか。

   コロナ専門病棟は、たしかに各地でちらほらと作られてきている。ただし、予備費が多すぎるという批判を受け、執行を抑制させる要因が働いていなかったのかという点も、大いに気になるところだ。

このまま放置すれば、失業者も自殺者も増加する

   予測という観点から言えば、さらに気になることもある。7-9月期のGDP速報が11月16日にでたが、1年前と比べて30兆円も低く、筆者の試算した潜在GDPから見て40兆円も低い状態だ。この程度のGDPギャップを放置しておくと、半年後に、失業者は120万人程度、それに伴う自殺者は6000人程度増加する。これまでのコロナによる死者の3倍程度だ。

   それでも、3次補正では10兆円程度の「真水」しかないといわれる。後は民間経済で埋めるという。しかし、内閣府によれば、政府支出乗数は1.1にも満たないので、民間が誘発されず民間経済が出るということはない。つまり、その程度の真水では失業者80万人、自殺者4000人程度増加という悲惨な結果がまっている。人命がかかってるのだから、3次補正をケチってはいけない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「FACTを基に日本を正しく読み解く方法」(扶桑社新書)、「国家の怠慢」(新潮新書、共著)など。


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