「国の利益のために」と米トランプ大統領は2020年11月23日、バイデン次期政権への移行プロセス開始を許可したことを明らかにした。ただし、法廷闘争を続行する姿勢は崩していない。今回の大統領選で、「不正があった」と感じているアメリカ人は、民主党支持者の中にもおり、複数の世論調査などから意外に多いことがわかる。
「最も大切なのは、国家だ」トランプ氏盟友も批判
米大統領選は不正だと信じ、2020年11月14日、全米から首都ワシントンに集まったトランプ支持者たちについて、直近のこの連載で3回に分けて取り上げた。
その最後の回で、極右の自警団とされる「プラウド・ボーイズ」と私が行動を共にした夜について書いた記事をフェイスブックにアップすると、その英訳(誤訳)を読んだ知人のアメリカ人が、「私が選挙を不正だと思っている」と勘違いし、コメントしてきた。
「何ですって? あなたは本当に私たちの選挙が安全で公正でなかったと信じてるの? あの人たちは狂ったナチス! すべて陰謀論よ」
この知人というのは、私が高校時代に米中西部ウィスコンシン州にある人口2000人の小さな町でホームステイした家族のホストシスターで、今も親しくしている。
今回の大統領選で激戦州だったウィスコンシン州には、共和党を支持する人も多いが、彼女をはじめ私の友人知人のほとんどは民主党支持者だ。
「選挙が不正だったとしたらなぜ、トランプの弁護団が起こした30以上の訴訟ほぼすべてが敗訴や取り下げになってるの? すべての票は民主共和両党で監視され、監視カメラでもモニターされていた。『選挙は史上最も安全に実施された』と言ったサイバー・インフラの担当高官を、トランプは解雇したばかり。トランプは妄想にかられているのよ」
トランプ氏の盟友だったニュージャージー州のクリス・クリスティ前知事(元弁護士・検事)は、政権移行を渋るトランプ氏は「国の恥さらし」と罵った。
11月22日にABCのインタビューで彼は、「不正を訴えながら、証拠を出せないのなら、証拠が存在しないということだ。最も大切なのは、国家だ。共和党と同じくらい、国家を優先しなければならない」とトランプ氏を非難した。