ブームじゃなくても発生してきた「押し付け行為」
これら、「ついうっかり」やってしまいがちな「ブームの押し付け」行為だが、確かに、これらの指摘を実践すれば、押し付け行為はせずに済みそうだ。ただ、考えてみると、このような押し付け行為は「ブームの発生時」以外でも起きてきたのもまた事実である。
今から2年ほど前、2018年頃にはウェブメディアの記事などをきっかけに、「ドラゴンボールハラスメント」「スラムダンクハラスメント」「ガンダムハラスメント」といった、主に、職場の先輩社員から若手社員に対し、まるで、「必須の教養」と言わんばかりに、「えー、知らないの?」「これぐらい知っとけよ!」といったなじり文句と共に行われるハラスメントが話題になっていた。
これらは、作品がブームを迎えていた時期とハラスメントが行われていた時期が大きく離れており、「ブームの押し付け行為」ではないが、その一方で、「自らが好きなものを無意識の内に押し付けてしまう」という点が共通しており、「キメハラ」と同じ構造をしているハラスメントと言えるだろう。これらについても鈴木氏に意見を聞いてみると、
「これに関しても、『必須の教養を知らない最近の若い者はなっとらん!』といった悪い感情で起きているというよりは、『教養』を若い人に与えてレベルアップのお手伝いをしつつ、『若者と話題を共有することで、若者に近づきたい』という欲求を満たそうとしていると考えるべきでしょう。ただ、しばしばその欲求は肥大化してしまうため若い人としては迷惑千万。しかも、その『教養』はあくまでその世代限定のものであるところが何とも悲しいところです。なので、どうしてもこの手の話がしたくなったら、やはり、『最近、あなたは何か漫画は読んだ?』といった質問から始めるのが無難でしょう」
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)