突然浴びた「ペッパースプレー」
彼らは一斉に「Whose Street?(誰のストリートだ?)」「Our Street!(我々のストリートだ!」と叫びながら、前進していく。これはBLMの抗議デモでいつも叫ばれている文句と同じだ。そして、「Fuck ANTIFA!」とも連呼し始めた。
前方に黒づくめのアンティファ集団が立ちはだかっている。
突然、武装した警察隊が後ろからものすごい勢いで、太いタイヤ付きのマウンテンバイクのような自転車に乗って走り抜けた。
アンティファらしき集団の前、そしてプラウド・ボーイズの集団の前に、それぞれ一列に警官が並ぶ。自転車を横にして自分たちの前に置き、デモ隊が通れないようにブロックする。
アンティファ集団の中に、黒い傘をこちらに向けて指す人たちが見える。ペッパースプレーなどから、身を守るためだ。
双方で激しい罵り合いが続くと、プラウド・ボーイズの中に紛れて私のすぐそばにいた中年の白人女性が、突然、泣き崩れた。
「アメリカは憎み合ってばかりいて、なぜ、愛を与え合うことができないの? あの子たち(アンティファ)はまだ子供よ。私にだって、子供がいるのよ」
小競り合いが起きそうになると、さらに両者の距離を取るために、警察隊が「Move back! Move back! (後ろに下がれ!)」と命令しながら、自転車をバンバンとこちらに移動し、後退りさせる。
一緒に行動しながらプラウド・ボーイズたちが、「大丈夫か」と何度も私に声をかけてくれた。
「僕らは人種差別主義者なんかじゃないんだよ。君のことだって、大好きさ。でもあいつらのやることは、酷すぎる」と1人が言った。
突然、今来た方向に向かって、プラウド・ボーイズが一斉に走って戻り始めた。今度はそちらの方向から、アンティファが攻めてきているというのだ。
どこからともなく、別の警察隊が一斉に走り、両者の間に割り込もうとする。が、間に合わず、殴り合いが始まる。突然、異臭がし、急に鼻の中に唐辛子を入れられたような痛みを感じた。
すぐそばにいた男性が、「大丈夫か。僕もやられたよ」と声をかけてくれた。
道路脇にトランプ支持者の男性が座り込み、手で両目を押さえ、わめいている。別の男性がペットボトルに水を彼の目に流し続けているが、よほど痛いらしく号泣している。
彼も私も「ペッパースプレー」を浴びたのだ。私はメガネとマスクをしていたので、直接、浴びることはなかったが、痛みは数時間、続いた。