2050年に温室効果ガス「ゼロ」 本当にできるのか

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原発の扱いは?

   では、温室効果ガス「ゼロ」とはどういうことなのか。太陽光や水力など再生可能エネルギーはCO2排出ゼロだが、それ以外にCO2をまったく排出しない、つまりガソリンや発電燃料などとして石油や石炭を一切使わないという意味ではない。そうした「排出」分と、「吸収」分を差し引き相殺して「実質ゼロ」にするという意味だ。「吸収」は大きく二つ。まず植物の光合成で、太陽のエネルギーによってCO2から炭素(C)を取り込んで酸素(O)を排出する。2018年度に国内で12億4000万トンの温室効果ガスを排出したのに対し、森林などの植物で5%弱回収した。回収のもう一つの柱がCO2を回収して地中に埋める技術などだ。

   整理すると、「ゼロ」のためには、(1)火力発電、とりわけ石炭火力を減らす、(2)再生エネを増やす、(3)省エネ、CO2回収・貯蔵技術、CO2を出さない新たな発電など技術革新を進める――ことが必要になる。CO2を出さない原発の扱いも焦点になる。日本は国土の3分の2が森林であり、植物の吸収を大きく増やすのは無理だろう。

   菅首相は再生エネの拡大では、欧州などで急拡大している風力発電の推進を掲げる。また、「革新的なイノベーション」を目指す考えを強調しており、具体的には、回収・貯蔵のほか、水素やアンモニアによるCO2を出さない発電、エネルギーの効率的な活用のための次世代型リチウムイオン電池、電力ロスを減らすパワー半導体などがとりあえずの候補。技術革新は、欧州共同体(EU)がポスト・コロナの循環型社会構築と経済復興の両立を図る「グリーンリカバリー」を戦略的に打ち出しており、菅政権も、環境対策の取り組みで企業が儲けることを目指す。そのため、補助金や優遇税制などで後押しする考えだ。

   原発について菅首相は「安全最優先で原子力政策を進める」として、新増設を「現時点で考えていない」(11月4日衆院予算委)と述べる。梶山経産相も10年程度、新増設は無理との見通しを示す一方、既存の原発については「最大限使っていく」と語っている(朝日新聞12日付朝刊インタビュー)。つまり、政府としては、石炭火力の穴埋めに必要との認識だ。ただ、どの程度、原発に依存するのかは言及を避けている。

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