ツイッターの「嫌いボタン」導入で、なにが起きる? 心理学的に分析する「炎上のリスク」

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   2020年11月18日に明らかになった、ツイッターが新機能の導入を検討しているとのニュース。その中でも特に話題になっているのが、「嫌い(dislike)ボタン」もしくは「反対投票(downvote)ボタン」が導入されるか否かについてだ。

   ツイッターには以前から、その投稿を良いと感じたことを表す「いいね!」の機能がある反面、悪いと感じたことを表す機能は存在していなかった。一方、良い感情と悪い感情の両方を表す機能を実装しているウェブサイトとしては、YouTubeやヤフーニュースのコメント欄が挙げられるため、ツイッターに当該機能が実装されてもネット全体ではそれほど新しい動きとは言えない。ただ、ツイッター内に限定してみれば画期的な動きであり、このため、大きな話題になっているのだ。

  • 「嫌いボタン」なんていらない!?(写真はイメージ)
    「嫌いボタン」なんていらない!?(写真はイメージ)
  • 「嫌いボタン」なんていらない!?(写真はイメージ)

「なぜわざわざ争いの種を増やすような事するのか」

   ただ、この新機能(以下、嫌いボタン)が導入された場合について、そのツイッター上では不安の声が次々と上がっている。あるツイッターアカウントは、

「嫌いボタンねえ...なぜわざわざ争いの種を増やすような事するのか解りかねるねえ。活発な議論が増えるとか思ってるのかな? 互いに揚げ足を取り合う醜い罵り合いが増えるだけだと思うけどねえ」

   と、ただでさえ「炎上」を繰り返してきたツイッターにおいて新たな火種を作りかねないとツイート。また、別のアカウントは「嫌いボタンできたらTwitterやめるわ」と、ツイッターからの撤退を匂わせているほどだ。

   これら、懸念の声が続々と上がっている「嫌いボタン構想」だが、確かに、何やら「危険な香り」がする改革案である感は否めない。というのも、「嫌い」という感情は人間の根源的な感情である以上、それが、「理性的」に使われる可能性はあまり高いとは考えられず、ただでさえ炎上しやすいツイッターがさらなる「可燃性」を獲得するように思えるからだ。

   そこで、まだ構想の段階にあるとはいえ、J-CASTニュース編集部は、仮に「嫌いボタン」が導入された場合を想定しつつ、その新機能がユーザーたる人間にどのような変化をもたらす可能性があるかについて、経営コンサルタントで心理学博士の鈴木丈織氏に意見を聞いた。

炎上の可能性は、やはり高まる

   まず、鈴木氏は「嫌いボタン」が導入された場合、「直感的に行動する人」と「理論立てて行動する人」で、その使用率に差が出るのではないかとの考えを示しつつ、炎上の可能性は高まるのではないかと予想した。

「『直感的に行動する人』は、『嫌いボタン』が導入された場合、ツイートを見て不快感を感じた時は、進んでそれを使うようになると考えられます。一方、『理論立てて行動する人』はツイートを見て不快感を感じた場合、リプライで反論を送り付けるということをすると予想されます。ですので、『嫌いボタン』を導入した場合、直感的な人にはツイッター上での行動に大きな変化が出るでしょうが、理論的な人には、これといった変化をもたらすことはないと考えられます」
「これらのうち、理論的な人による『リプライで反論を送り付ける』ということは現在でもすでに行われていますから、ここに関する変化はないでしょう。しかし、ここに、直感的な人が『嫌いボタンを押す』という行為が加わるわけですから、『嫌いボタン』を実装した場合、現在よりもツイッター上で炎上が起こる可能性は高まるでしょう」

   その一方で、「嫌いボタン」が実装された場合、それが原因で人間の憎悪の感情が増幅される可能性については否定的な見方を示した。

「『嫌いボタン』が出来たことが原因で、憎悪の感情が増幅されることはないと思います。やはり、順番として『気に入らないツイートを目にして、そのユーザーが憎悪の感情を抱く』ということが先にあり、その発露として『反論リプライ』が発生しているわけです。そこに、直感的な人が文章を作らずして『嫌い』の感情を表現できる『嫌いボタン』を使うようになるという展開になると考えられます」

   確かに、これまでツイッター上での炎上の際には、「このひどい発言に関心を持った」という意思を表明すべく、失言や暴言のツイートにも、賛成の意を表さない「いいね!」が付いてきたのは事実だ。ゆえに、「嫌いボタン」が実装された際には、そのように押されていた「いいね!」ボタンの押下回数が「嫌いボタン」の押下回数に反映されるということになりそうだ。

炎上の可能性が低くなる「ボタン」はあるのか

   ただ、これらの状況から鈴木氏は、直感的な人が「嫌いボタン」を押し、その一方で、理論的な人が反論のリプライを行うという状況が相乗効果をもたらし、これまでよりも炎上が発生する可能性が上がる可能性を指摘した。

「前述の通り、直感的な人と理論的な人の行動パターンが異なるとはいえ、理論的な人が『嫌いボタン』がたくさん押されているのを見て、いつもよりも『反論リプライ』をしたくなったり、またはその逆で、直感的な人が『反論リプライ』を見てしまったがために、いつもよりも『嫌いボタン』を押したくなる、という状況が発生すると考えられます。双方が双方の推進力となり得るので、やはり、『嫌いボタン』が導入された場合、炎上の可能性はそれ以前よりも高まるでしょう」

   最後に、「このようなボタンを導入すれば、現在よりも炎上の可能性が低くなる」といったボタンはありうるかとの問いに対し、鈴木氏は機知に富んだ回答を行った。

「『仕事で疲れたー!』といった『いいね!』を押しづらいツイートに対して、労いの感情を表すことが出来るよう、『お疲れ様ボタン』を実装してみてはどうでしょうか?」

(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)

姉妹サイト