「俺たちはリベラルと違い、街を燃やしたりしない」
その後、街中ですれ違った人たちは、その多くがトランプ支持者だった。身につけているものから支持者とわかると、互いに笑みを交わし、声をかけ合っている。ちょうど一週間前にニューヨークの街じゅうで、「バイデン勝利」に湧く人たちが、そうしていたように。
あちこちのホテルや店の前で、トランプ支持者が見知らぬ人同士でおしゃべりしている。私のことを支持者だと思い、「ワシントンまで来てくれて、ありがとう」と声をかけてくる人も少なくない。
時に、彼らトランプ支持者に反発を覚える地元の人たちが、「この街から出ていけ!」「Fuck Trump!」などと罵声を浴びせると、激しい言い合いが始まった。
道端で出会ったクリスチャンの男性2人は、私がこの連載を書いており、クリスチャンだと知ると、「あなたのために祈ってもいいですか」と言い、その場で祈ってくれた。
「神様、ミッツィ(私のニックネーム)の安全をお守りください。彼女が心のこもった素晴らしい記事を書けますように、お導きください」
そして、「明日、よかったら一緒に抗議デモに行きましょう」と誘ってくれた。
その夜、トランプ支持者がよく集まるバー「ハリーズ」に行ってみると、店の前で陽気に前夜祭が開かれていた。車道では、「Y.M.C.A.」などのディスコミュージックが大音響で流れるなか、それに合わせて支持者たちが楽しそうに歌い踊っている。
「Y.M.C.A.」は、トランプ氏の集会でよく流れ、支持者らもトランプ氏もそれに合わせて踊り出す。
路肩には、「TRUMP UNITY」の大きな文字をあしらった荷台を牽引する車が停まっている。何台ものパトカー、そして大勢の警官が待機していた。星条旗を手にトランプ支持者になりすました男性が車道に乱入してくると、「警官の指示に従うように」とトランプ支持者らが彼に呼びかける。呼びかけていた人の中には、リベラルのメディアでは「極右の自警団」とされる「Proud Boys(プラウド・ボーイズ)」もいた。
この乱入をきっかけにやや混乱が起きると、8時40分頃、突然、警察から集会に解散命令が出て、バーが閉鎖された。
トランプ支持者の男性が、「こんなに平和的にやっているのに、なぜだ? 俺たちはリベラルと違って、街を燃やしたりしていないじゃないか」と叫ぶ。
「市長(民主党)の命令だろう」とする声が上がった。私がバーのオーナーに理由を尋ねると、「そうではないよ。人が多過ぎて、新型コロナウイルス感染の心配もあるからだよ」と答えた。このバーのオーナーは、トランプ支持者と聞いている。
主催者らしき女性がスピーカーを通して、「不平はやめて、規則に従いましょう。私たちは法と秩序を重んじる人間です。警官の皆さんに敬意を払いましょう。明日、また会いましょう。気をつけて帰ってください。God bless America.(アメリカに神のご加護がありますように)。警官の皆さん、ありがとうございました」と呼びかけた。
すると、あちこちから警官たちに対して、「Thank you!」と感謝の声と歓声、拍手が湧き起こった。