「アメリカに住む半分の人たちのことを、忘れないでほしい」
私がワシントンに到着し、ホテルに向かう途中、「MAGA(Make America Great Again)の赤い野球帽を被った人たちで繁盛している屋台があった。大統領選当日(11月3日)に私がワシントン入りした際、この屋台主のベトナム出身の男性と話した。
あの時、トランプ支持者だという彼の店に並べられていたのは、ほとんどトランプ・グッズで、申し訳程度にいくつかバイデン・グッズが置かれていた。
ワシントンは民主党支持者が圧倒的に多い街だ。今、わかっているデータでは、今回の大統領選でトランプ氏に投票したのは、わずか5.5%だ。
「この街で、あなたは勇気があるわね」と言うと、「僕はトランプが好きなんだ。別に悪いことをしてるわけじゃない」と胸を張った。
「本当はトランプのグッズだけ売りたいんだ。でもバイデン支持者が多いし、商品がないと彼らがうるさいから、バイデンのも一応、置いている」と言っていた。
今回、店のすぐ脇の彼のトラックには、バイデン支持の大きな旗が掲げられていた。
「生活のためには仕方ないんだ。でも、今はトランプ・グッズがどんどん売れてるよ」と嬉しそうに話す。その日辺りから、全国のトランプ支持者が到着し始めたからだ。
店の前にいた家族に声をかけると、皆、笑顔で挨拶を返してくれた。
彼らは、米南東部サウスカロライナ州グリーンヴィルから車でやってきたという。夫婦と子供5人(8歳から18歳)で、全員、トランプ支持の野球帽とパーカーなどを身につけていた。
私が記事を書いていると知ると、父親が「メディアか」と顔を曇らせたものの、すぐに心を開き、「日本の人たちに伝えてくれ。『アメリカに住む半分の人たちのことを、忘れないでほしい』と」と語った。
「僕たちは世界じゅうで誤解されている。トランプ支持者はきちんとした、いい人たちだ。ミドルクラスの勤勉なアメリカ人だ。黒人の命は大切だと思っている。この国が大切だと思っている。だからこの国で起きていることに、無関心ではいられないんだ。法に則って真実が明らかになり、正しい大統領が選ばれる。それはドナルド・J・トランプと信じている」
彼は、選挙関連のテクノロジー企業「ドミニオン投票システムズ(Dominion Voting Systems)」の投票システムについて触れた。全米の約半数の州で使われているこのシステムで、数百万票のトランプ票を削除したとの疑惑があるというのだ。