日本人の「対中意識」、改善から一転悪化 対する中国人の意識は「横ばい」...その理由は?

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   日本のNPO「言論NPO」と中国の「中国国際出版集団」は2020年11月17日、恒例の「日中共同世論調査」の結果を発表した。

   互いの国に対する印象が「良くない」とする人が依然として圧倒的だが、それでも、ここ3年ほどは日本人が持つ対中感情は改善しつつあった。だが、今回の調査結果では再び悪化。中国が南シナ海での行動を活発化させたりしていることに日本でも反発が起こっていることを反映した。中国人が日本に対して抱く感情も改善が続いてきたが、今回は横ばいになった。コロナ禍で中国人観光客の日本への訪問が困難になり、「改善効果が非常に止まってしまっている」(言論NPO・工藤泰志代表)ためだとみられる。さらに、米中関係が悪化する中で、逆に日中関係を重要視する人の割合も増えたことが明らかになった。

  • 相手国に対する印象の変化(言論NPOの発表資料から)
    相手国に対する印象の変化(言論NPOの発表資料から)
  • 相手国に対する印象の変化(言論NPOの発表資料から)

中国人の日本への印象、この1年で74.0%が「特に変化していない」

   調査は20年9月から10月にかけて18歳以上の男女を対象に行われ、日本では1000、中国では10都市で1571の有効回答を得た。

   日本人の中国に対する印象を「良くない」(「どちらかといえば良くない」を含む)とする回答は、19年より5ポイント高い89.7%だった。今回の調査は16回目で、16年は91.6%と過去2番目に高い水準を記録。17~19年と3年連続で減少を続けてきたが、再び増加に転じた。一方、中国人で日本に対する印象を「良くない」と考える人は、13年の92.8%をピークに減少を続け、19年調査では52.7%だった。20年は52.9%に微増した。

   ここ1年の、互いの国への印象の変化に関する質問でも、日本側が中国に対する印象が悪くなっていることがうかがえる。日本人はこの1年間で中国に対する印象は「特に変化していない」とする人が54.9%いる一方で、「悪くなった」とする人も37.0%おり、19年の22.8%から14.2ポイント増えている。中国人は74.0%が「特に変化していない」と回答している。

「国際的なルールと異なる行動」「南シナ海などでとっている行動」への違和感増える

互いに対して「良くない印象」を持つ理由(言論NPOの発表資料から)
互いに対して「良くない印象」を持つ理由(言論NPOの発表資料から)

   日本人が中国に「良くない印象」を持つ理由(複数回答)で最も多かったのが「尖閣諸島周辺の日本領海や領空をたびたび侵犯しているから」の57.4%(19年51.4%)で、「国際的なルールと異なる行動をするから」49.2%(同42.7%)、「中国が南シナ海などでとっている行動が強引で違和感を覚えるから」47.3%(同32.3%)、「共産党の一党支配という政治体制に違和感を覚えるから」47.0%(同43.0%)が続いた。この1年で、中国の南シナ海での行動や、国際的ルールと異なる行動に違和感を持つ人が増えたことがうかがえる。

   また、この項目への回答からは読み取れないが、工藤氏は「基本的に日本人は中国のコロナ対策に関してはネガディブに見ている。それが中国の印象なり、中国政府に対する印象の悪化につながっていると言えると思う」とも話した。

   逆に中国人が日本に「良くない印象」を持つ理由は、「中国を侵略した歴史についてきちんと謝罪し反省していないから」74.1%(19年60.5%)、「日本が魚釣島及び周辺諸島を『国有化』し、対立を引き起こしたから」53.3%(同56.9%)、「日本は米国と連携して軍事、経済、イデオロギーなどの面から中国を包囲しようとしているから」19.7%(同44.1%)、「日本のメディアが中国の脅威を喧伝するから」16.6%(同24.1%)の順に多かった。「日本は米国と連携して~」の選択肢を選んだ人が大幅に減り、米中対立が日中関係への認識にも影響したことがうかがえる。

中国で「対米関係の方が日中関係よりも重要」が13.6ポイント減

日中関係と対米関係の重要性について(言論NPOの発表資料から)
日中関係と対米関係の重要性について(言論NPOの発表資料から)

   日中関係と対米関係の重要性について聞いた項目では、日本では「どちらも同程度に重要」が49.6%(19年48.2%)、「対米関係の方が日中関係よりも重要」が33.3%(同34.8%)。この1年でほとんど変化はなかった。中国では、「どちらも同程度に重要」が52.4%(同39.4%)、「対米関係の方が日中関係よりも重要」が22.2%(同35.8%)だった。中国で対米関係を重視する人の割合が減少したことが分かる。

   さらに、「相手国と米国のどちらに親近感を覚えるか」という設問では、日本側で「相手国により親近感を感じる」(=米国よりも中国に親近感を覚える)と答えた人は2.8%(19年4.8%)だったが、中国側で同じ選択肢(=米国よりも日本に親近感を覚える)を選んだ人は22.7%(同12.3%)だった。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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