2020年11月16日に発表されたNHK紅白歌合戦の出場歌手では、乃木坂46をはじめとする「坂道」グループが3組も出場を決める一方で、09年から連続で出場してきたAKB48は通算13回目の出場を逃した。
19年から紅白出場が「当たり前じゃない」と繰り返してきたグループ総監督の向井地美音さん(22)は、落選を受けて「この2年間」で「バトンを私たちの代で何度も止めてしまいました。そして今日も」とツイート。19年から続く厳しい状況の延長線上の落選だとの見方を示しながら、「今までの歴史に甘えず、今度こそ私たちが新しいバトンを渡せるように頑張る」と再スタートを誓った。
選抜総選挙、じゃんけん大会、AKBINGO!、オールナイトニッポン...
AKB48は07年、中川翔子さん(35)、リア・ディゾンさん(34)とともに「アキバ枠」の一員として紅白に初出場。08年は落選したが09年に返り咲き、19年まで11回連続、通算12回出場してきた。この間、13年には大島優子さん(32=14年卒業)がステージ上で卒業発表して波紋を広げ、16年に出場メンバー、17年に披露する楽曲を視聴者の投票で選んだことも話題になった。17年の投票では、渡辺麻友さん(26=17年卒業)の卒業シングル「11月のアンクレット」(17年発売)が1位に選ばれ、渡辺さんのラスト紅白に華を添えたが、18、19年の2年間は、その年のヒット曲ではない「恋するフォーチュンクッキー」(13年発売)をパフォーマンスしていた。
向井地さんは落選を受けて、
「この2年間、先輩方が繋いでくださったバトンを私たちの代で何度も止めてしまいました。そして今日も。それが何より申し訳ないし不甲斐ないです」
とツイート。グループの伝統が途絶えたことを悔やんだ。
向井地さんが指摘するように、19~20年の間に「止まったバトン」は多い。グループの最大イベントで09年から行われてきた選抜総選挙、10年に始まり、じゃんけんで勝ち進んだ人が楽曲を出せる「じゃんけん大会」、11年に始まった「AKB48紅白対抗歌合戦」の3つはグループにとっての恒例イベントだったが、18年を最後に19、20年は開催されていない。
メディアへの露出も同様だ。19年3月には、10年4月から続いた「AKB48のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)と、13年10月に始まった「AKB48 SHOW!」(NHK BSプレミアム)の放送が終了。半年後の19年9月には、08年10月から約11年にわたって放送されてきた「AKBINGO!」(日本テレビ)も終了した。
2019年紅白で「出させていただけるのも当たり前じゃない」と語っていた向井地さん
19年1月にはNGT48の山口真帆さん(25=19年卒業)への暴行事件が発覚(暴行容疑で逮捕されたファンの男らは不起訴処分になり、民事訴訟でも20年4月に運営会社と和解が成立)。運営会社の拙い対応に批判が広がり、NGT48のみならず、AKB48グループに対して世論からきわめて厳しい目が向けられた。そんな中でも19年の紅白出場が決まり、向井地さんは12月29日のリハーサルで、取材に対して
「どんな状況になっても手を差し伸べてくださるスタッフさんだったり、応援してくださるファンの方がずっと居続けてくださるというのが、本当に有り難いことで、こういう風に紅白に出させていただけるのも当たり前じゃないんだな、ということを本当に感じて、今まで以上に紅白に出場できると聞いて本当に嬉しかったので、感謝の気持ちや初心を忘れることなく、来年も頑張っていきたい」
などと述べていた。こういった厳しい状況に、20年に入って表面化した新型コロナウイルスの問題が追い打ちをかけた。
例えば18年までは年に4枚程度のペースで新曲を発売していたが、19年は2枚になり、20年は3月に発売された「失恋、ありがとう」の1枚にまで減少した。CDに握手会の参加券をつける方式は、アイドル事業の収益の柱のひとつ。対面式の握手会の再開のめどが立たないことが新曲発売の判断に影響した可能性もある。それ以外に、4月に予定されていた峯岸みなみさん(28)の卒業コンサートをはじめとした多くのイベントが延期や中止に追い込まれ、活動全体が大幅に制限されることになった。
なお、スポーツ各紙によると、NHK側はAKB48の落選理由を「総合的な判断」などと説明。例年同様、個別歌手の出場や落選の理由について具体的には説明していない模様だ。こういった説明は出場者の発表会見後に、いわゆる「囲み取材」の形式で行うが、20年については、コロナ対策を理由に「ラジオ・テレビ記者会」「東京放送記者会」などの記者クラブ加盟社以外の取材を認めなかった。
運営会社も「現状の立ち位置を真摯に受け止めて」「また一からAKB48の歴史を」
向井地さんは落選発表後のツイートで
「だけどここからもう一度...今までの歴史に甘えず、今度こそ私たちが新しいバトンを渡せるように頑張るので、見守っていてください。AKB48が大好き!」
と続け、これまでの歴史を仕切り直す形で、グループとしての新たな歩みを誓った。
他のメンバーや、運営会社も同様の決意を示した。この日配信された動画番組では、「チームK」キャプテンの込山榛香さん(22)が
「11年連続出場という、先輩たちと築き上げてきた記録が途絶えてしまい、正直、悔しい気持ちもありますが、今回の結果を真摯に受け止め、これからもメンバー・スタッフ一同、前を向いて頑張っていきたいと思います」
と話した。運営会社が報道関係者向けに配信したニュースレターでは、イベントの予定や、メンバーの人となりを紹介する記事を掲載。最後のあいさつは、次の文章で結ばれた。
「AKB48は15周年となる節目の年を迎えます。現状の立ち位置を真摯に受け止めて、AKB48メンバー・スタッフ一同、また一からAKB48の歴史を築いていけるよう精進してまいりますので、どうか一層のご指導とお力添えを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)