ドルチェ&ガッバーナの香水と「真っ赤なクルマ」伝説 瑛人は紅白で「商品名」を歌えるのか

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   2020年12月31日放送の「第71回紅白歌合戦」に、「香水」が大ヒットしたシンガーソングライターの瑛人さんの初出場が決まった。

   「香水」の歌詞では、サビで実在のブランド「ドルチェ&ガッバーナ」が印象的に使われる。一方のNHKは、広告になることを防ぐため、商品名を忌避することで知られる。日刊スポーツ(ウェブ版)などによれば、11月16日の発表会見ではこの件に質問が飛び、瑛人さんが「寝ずに考えます」と記者を笑わせる一幕があったというが――。

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商品名、うっかり口にして「1年間出禁」に

   NHKで商品名などが「タブー」なのは、放送法83条のこの条文に基づいている。

「協会は、他人の営業に関する広告の放送をしてはならない」

   このルールは、特に過去には非常に厳しく運用されていたようだ。古くは1950年、落語家・露の五郎兵衛さん(故人)が放送中、うっかり「カルピス」と口にしてしまったところ、1年間の「出演停止」処分に。漫才師の秋田Aスケ・Bスケさん(ともに故人)も、うっかりネタの中で「サントリー」と口をすべらせ、やはり出演停止となった(読売新聞<大阪>、1996年3月14日付夕刊)。

   このルールは歌でも同じで、歌手の岩崎良美さんは1980年代前半、「Vacance」の歌詞で「ペリエ片手に......」とあるところを「ジュース片手に」と変えさせられたとか(共同通信、2013年1月9日付)。ジュースとペリエではずいぶん趣が違う。

   もちろん、NHKの大看板である紅白歌合戦ともなれば、その規制はさらに厳しい。1973年、「神田川」が大ヒットしていたフォークグループ・かぐや姫に出場が打診された。しかし、歌詞にある「クレパス」を変えるという条件が。これをかぐや姫は蹴って、結局1999年まで出場の機会がなかった(読売新聞<東京>、2017年9月2日付朝刊)。

   1995年には、歌手の小沢健二さんが出場を決めたものの、ヒット曲の「カローラIIにのって」がCMソングだったこともあって、「ラブリー」を歌ったともいう(日刊スポーツ、2003年11月8日付)。

「テトラポット」がOKだった理由

   もちろん、例外もある。実は先ほど登場した放送法83条には続きがあり、「前項の規定は、放送番組編集上必要であつて、かつ、他人の営業に関する広告のためにするものでないと認められる場合において、著作者又は営業者の氏名又は名称等を放送することを妨げるものではない」とされる。つまり、「広告のため」でないなら、商品名などを出しても問題ないということだ。

   たとえば2000年の紅白では、歌手のaikoさんが「ボーイフレンド」で出場したが、歌詞にある商品名「テトラポット」はそのままに。「個人消費するものではない」というのもOKの理由だったという(スポーツ報知、2000年12月14日付)。

   一方で2006年にはグループ魂が「君にジュースを買ってあげる」で、具体的な商品名を含む歌詞の部分を、審査員の琴欧州関(現・鳴戸親方)とのやりとりに変えるという、タブーを逆手に取った演出に。しかも琴欧州関に「ブルガリアヨーグルト」と口にさせてしまうという「おきて破り」を演じて、話題を呼んだ。

紅白で「真っ赤なクルマ」は都市伝説?

   ――とここまで読んで、「あの話」がないことに気付いた方もいるかもしれない。

   あの山口百恵さんが、ヒット曲「プレイバックPart2」を紅白で歌うも、歌詞の「真っ赤なポルシェ」を「真っ赤なクルマ」に変えさせられた、というエピソードだ。たとえば新聞記事でも、

「NHKの紅白歌合戦では、ポルシェが商品名という理由で歌詞を『真っ赤なクルマ』と変更させられ話題になりました」(中日新聞、2006年8月17日付朝刊)

と、これを「事実」として紹介しているものもある。

   ところが実は、スポーツ報知の前述記事や、「アサ芸プラス」への作家・合田道人氏の寄稿などにも詳しいが、トリを務めた1978年のステージでは、山口さんは「真っ赤なポルシェ」とちゃんと歌っている。他のNHK番組で「真っ赤なクルマ」と歌ったことがあるとされ、この件と混同されて話題が独り歩きしたとみられる。

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