特急格上げが進んだホームライナー
もう一つ興味深い現象は、185系置き換えと同時に「湘南ライナー」などの廃止でJR東日本の首都圏から「ホームライナー」が全廃されることだ。朝夕のラッシュ時にライナー券を購入して乗れるホームライナーは、主に特急型車両があてられて必ず座って通勤できるメリットがある。
この「特急型を特急以外の用途に使う運用」をポピュラーにしたのも185系の影響が大きかった。それまでの特急型と違い窓が開きドア幅も広く設計され、はじめから特急以外の運用も想定されていた。1982年に大宮まで開業した東北・上越新幹線に上野駅から連絡列車として運転された「新幹線リレー号」に使われたのも同系である。新幹線リレー号から撤退すると、東海道・高崎・東北線で特急のみならずホームライナーにも運用を広げていく。東海道線沿線と東京駅を結ぶ湘南ライナーには登場時の1986年からずっと運用され、派生列車のおはようライナー新宿・ホームライナー小田原として新宿駅にも顔を出している。踊り子は行楽地への特急なので平日より土休日の方が本数が多いが、これらは平日だけの運転なので運用も効率的だ。
ホームライナーは長距離の通勤客に満員電車から解放され、ゆったり座って通勤できる恩恵をもたらした。80~00年代に運行線区を広げ、東海道線以外にも中央線・総武線・横須賀線・常磐線・高崎線・東北線で運転されていた。しかし2010年代に廃止が進み、東北・高崎線の「ホームライナー古河」「ホームライナー鴻巣」は2014年に廃止、2019年には総武線の「ホームライナー千葉」、中央線の「中央ライナー」「青梅ライナー」が廃止された。最後まで残ったのが東海道線系統の「湘南ライナー」系列だったが、来春の廃止で首都圏では全廃される。
代わりに設定されているのは通勤時間帯の特急で、高崎線の「スワローあかぎ」、中央線の「はちおうじ」「おうめ」、来春東海道線で運行予定の「湘南」などが該当する。事実上、ホームライナーの特急への格上げが相次いでいる。ライナー券は20年現在一律520円だが、これらの列車の特急料金は距離50㎞まで760円、100㎞まで1020円になる(事前購入の場合。車内で購入すると割高になる)。