医療界・厚労省は「受診控え」を懸念
与党の財政再建派は財務省に同調。自民党の「財政構造のあり方検討小委員会」(小渕優子委員長)が10月30日、1割負担は「限定された低所得者」に限るべきだとして、原則2割負担とするよう求める中間報告をまとめた。経団連も同日、同様の案を提言。連合や日本商工会議所、健康保険組合連合会(健保連)、全国健康保険協会(協会けんぽ)など現役世代を代表する関係5団体は11月4日、原則2割負担に引き上げるよう厚生労働省に要望した。
これに対し、医療界や厚労省は負担の大幅増に反対する。日本医師会の中川俊男会長は10月28日の会見で、「新型コロナでの受診控えによる健康への影響が懸念されている。さらなる受診控えを生じさせかねない政策をとり、高齢者に追い打ちをかけるべきではない。(2割負担は)限定的にしか認められない」とクギを刺した。老人が受診を控えることによる健康悪化や医療機関の収入減を警戒しているのだ。中川会長は11月11日の会見で、対象者の目安を年収340万円にするよう提案している。
厚労省も、2割負担となる層を絞りたい考えで、年収240万円以上(383万円未満)程度を想定しているとされ、これだと対象は約200万人になり、高齢者向けの介護保険制度で所得の上位20%が2割負担となっているのに見合う。
いずれの主張も、それぞれ論拠があり、単純に是非は論じられないが、ポイントは制度の持続可能性だろう。
高齢者1人当たりの医療費は、持病を抱えるなどのため現役世代よりも多い。高齢化により2020年度の後期高齢者の医療費は18兆円に達し、今の後期高齢者の医療制度が発足した2008年度の1.6倍に膨らんでいる。団塊の世代(1947~49年生まれ)が75歳に達し始める2022年度から医療費はさらに膨らむ。