実名・匿名報道巡り過去にも議論
実名・匿名報道の是非をめぐっては、直近では19年7月に起きた京都アニメーションでの放火殺人事件の際も議論となった。多くの遺族が氏名を公表しないように求めたものの、一部メディアが報じて報道機関への批判が湧き起こった。
在京テレビ局や新聞社などが加盟する日本新聞協会は20年6月、「メディアスクラム防止のための申し合わせ」との声明を発表し、「報道機関が、特に社会的影響の大きい事案で被害者を原則として実名で報じるのは、実名が事実の核心であり、正確な報道に不可欠であるからです。報道の真実性や訴求力を高めて公共の利益に資するためであり、被害者がかけがえのない存在であることを示す意味もあります」などと事件・事故の被害者を実名で報じる意義を述べていた。
メディア関係者の事件や不祥事では、東京高検の黒川弘務・前検事長が産経新聞や朝日新聞の社員と賭けマージャンをしていた問題や、東京新聞の記者が厚生労働省の職員を取材した際に怒鳴るなどの暴力的行為をした問題も、「匿名」対応を疑問視する声が上がった。