「私たちはメディアにはめられている」
彼女の夫は名門大学医学部を卒業し、医者として働いている。
「俳句って日本のものでしょう? 夫には毎日のように、医者仲間からトランプを馬鹿にしたくだらない俳句が、メールで送られてくるの。立派な教育を受けた人たちよ。どれだけ暇なのかしら。夫は返信せずに黙っているから、たぶんトランプを支持しているって気づかれているだろうけれど」
彼女と夫は、20代から読み続けてきた有力紙「ニューヨーク・タイムズ」の購読を、1か月ほど前にやめた。4、5年前まで、彼女は民主党を支持していたという。
「今のメディアは異様なほどにトランプを叩き、偏見に満ちている。トランプはファシストだと言い続けるけれど、そういう自分たちこそ、ファシストだわ。あれは報道じゃない。この国は全体主義に陥っている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』も、最近は『フォックス・ニュース』までもが、そんな状態よ。
でも、メディアには権力がある。私たちはメディアにはめられている。大統領選はまだ票の集計が終わっていないし、トランプも敗北宣言をしていないのに、なぜメディアが『バイデン勝利』を宣言するの? メディアは今頃、『やったね。誰が大統領になるか、自分たちがコントールできるんだ』って、大喜びしているはずだわ」
「バイデン勝利」を主要メディアが報じ、ニューヨークの街じゅうに人が溢れ、踊り歌い喜び合っていた日、彼女は耐えられず、家にこもっていたという。
「『バイデン勝利』に民主党支持者が大はしゃぎして、すでにバイデンが大統領のように振る舞っている。メディアがバイデンを、大統領に仕立て上げた。マスコミは『President-elect(次期大統領)』と繰り返し、既成事実をどんどん積み重ねていき、これをひっくり返したら、この国は大変なことになってしまう、という状態に持っていっているのよ。米国の内陸部に住む多くの人たちにとって、本当に不公平なことだわ」
西海岸と東海岸以外の地域に、トランプ支持者がより多い傾向にあるからだ。