岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
「トランプ支持者」は今、何を思っているのか(前編)

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「駄々をこねずに、敗北を認めたらいいのに」

   投票日の翌日、首都ワシントンで知り合ったキリスト教徒のもう一人のデビー(テキサス州ダラス在住)はその後、「不正がたくさん行われているし、メディアの報道はウソばかり。でも神は『盗まれたもの』をすべてを正してくれるわ」とメッセージを送ってきた。

   デビーについては、この連載の「『祭り』と『不正』で分断される大統領選」(11月7日公開)で触れた。

   別のトランプ支持者の知人は、大統領選の「不正」を報じる保守系のニュース報道のリンクを、何も言わずにひたすら私に送り続けてくる。

   トランプ支持者たちは、選挙前の数週間ほどニューヨーク市内でも大規模な集会を開いていたが、投票日以降、それらしき人をほとんど見かけなくなった。「バイデン勝利」報道の翌日、トランプタワー前に立ち、たった1人で警官支持の旗を振る男性に出会った。

   トランプ支持者の集会に一緒に行ったデビーは、「トランプは駄々をこねずに、敗北を認めたらいいのに。でも、彼はファイター(闘う人)だからね」と言った。

   しかし、トランプ支持者の中には、トランプ氏とともに勝利を手に入れるまで闘い続けようと燃える「ファイター」も少なくない。

   また、「メディアが大統領を決めるのか」「次々に既成事実を積み上げ、私たち国民が後戻りできないようにしている」などと今の流れに強く反発する人たちも多い。

   次回(11月15日公開予定)以降のこの連載では、なお「バイデン次期大統領」を認めない人たちの声を取り上げる。

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

 
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