トヨタが見せつけた強さと自信 一方、日産は...なぜここまで明暗が分かれたのか

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   まだ新型コロナウイルスの緊急事態宣言が全面解除されて間もない2020年5月、トヨタ自動車は21年3月期連結営業利益の見通しを発表した。前期比8割減の5000億円という数字よりも、新型コロナとの戦いが長引くことを世の中が覚悟し始めた段階で通期の予想を明らかにしたこと自体が、驚きを持って受け止められた。

   だが、その半年後の11月6日、オンライン記者会見に登場した豊田章男社長は、通期の営業利益見通しを2.6倍の1兆3000億円に引き上げると誇らしげに表明した。

  • トヨタ自動車の公式サイトより。
    トヨタ自動車の公式サイトより。
  • トヨタ自動車の公式サイトより。

「都市から郊外に生活拠点を移す動き」との関係

「今回の見通し上方修正は6カ月の頑張りもさることながら、これまでの11年間の取り組みによりトヨタという企業が少しずつ強くなってきたからだ」

   豊田社長は自身がトップに就任して以降の11年間があったからこそ、危機でも対応できたと胸を張った。豊田氏の社長就任はリーマン・ショックの翌年で、営業損益が赤字に転落した直後。そこから、お家芸の「カイゼン」で作業効率の改善やコストの削減を地道に繰り返すことによって、損益分岐点となる年間生産台数は800万台程度から600万台程度に下がっていた。その結果、本業の儲けを示す営業利益が想定以上に回復すると見込み、5月時点で7300億円と予想していた最終利益も1兆4200億円に引き上げた。

   もっとも、こうした業績の急回復は外部環境による部分も大きい。世界的に自動車需要が回復しており、特に主要市場の米国と中国はコロナ前の前年実績を上回る勢いだ。中国では政府による販売支援策も実施されており、新型コロナ感染拡大に伴う家計収入の落ち込みを補う各国の現金支給策も下支えしている模様だ。また、「ウィズ・コロナ」では人口が密集する都市から郊外に生活拠点を移す動きが世界的にあり、そういった人たちにとっては自動車が再び必需品になっていると側面もあるだろう。こうした回復基調を踏まえ、トヨタは2021年3月期のグループ全体(ダイハツ工業、日野自動車を含む)の世界販売台数の見通しを従来の910万台から942万台に引き上げ、連結売上高も従来予想の24兆円から26兆円に上昇修正した。

迫られる「次世代技術の開発で多額の投資」

   自動車需要の回復の恩恵は他メーカーにも及んでおり、ホンダも2021年3月期の連結営業利益の予想を従来の2000億円から4200億円に引き上げた。こうして販売環境は好転しているものの、地力に劣るメーカーは依然として赤字を予想している。カルロス・ゴーン前会長が進めた拡大路線の弊害でコロナ禍の前から業績が低迷していた日産自動車は、年間販売台数見通しを412万5000台から416万5000台に引き上げ、売上高と損益を上方修正したが、営業損益の予想はなお赤字(3400億円)に沈んだままだ。

   日産と連合を組む三菱自動車に至っては、年間販売台数の見通しを当初計画の84万5000台から82万4000台に引き下げた。主力市場とするインドネシアやフィリピンではコロナ禍からの回復が遅れているためで、1400億円の営業赤字見通しを据え置かざるをえなかった。コロナで業績の二極化が鮮明となる自動車メーカーは、業績が回復したとしても次世代技術の開発で多額の投資を迫られている。業界の更なる再編も予感させ、文字通りの生き残りを懸けた競争が激しさを増している。

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